Podcast Episode: Japan Compass #034

Pip: Japan Compassへようこそ。900万戸の空き家があるのに「家賃が高くて結婚できない」——これが住宅不足の話ではないとしたら、いったい何の話なのか。

Mara: 今回はHazzy Wildによる2035日本再設計シリーズの住宅編です。「持ち家か賃貸か」という問いを解体して、人生のどの段階でも住み続けられる社会設計を提案しています。

Pip: では、空き家900万戸の実態から始めましょう。

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住宅は「数」の問題ではなく「つなぐ仕組み」の問題

Mara: このシリーズがずっと問い続けてきたのは、制度の空白です。働き方、教育、介護、医療と検討してきた中で、住宅だけが残っていた。そして住宅は単なる不動産ではなく、人生のほぼすべての選択に関わる基盤だという前提から議論が始まります。

Pip: 2023年の住宅・土地統計調査の数字がそのギャップを鮮明にしています。

Mara: 直接引用するとこうです。「人口が減っているのに大量の住宅が存在し、同時に『住みたい場所では家賃が高い』『高齢者は賃貸を借りにくい』『子育て世帯に必要な広さを確保しにくい』『地方では空き家が増える』という、一見矛盾した問題が同時に存在します。」

Pip: 矛盾しているように見えて、実はミスマッチの話なんですね。空いている住宅と、人が住みたい住宅が一致していない。

Mara: そうです。空き家約900万戸、空き家率13.8パーセントという数字は、住宅の絶対量の問題ではなく、場所・質・価格・所有者と住みたい人が噛み合っていないことを示しています。地方には空き家があっても、仕事も病院もスーパーもない。都市には需要があっても供給が追いつかない。

Pip: 「空き家を無料で配れば地方創生になる」という発想が単純すぎる理由がそこにあります。耐震性、相続問題、改修費、上下水道——空き家にも種類と条件があります。

Mara: だからこそ提案の核心は、住宅政策を「何戸建てるか」から「誰が、どこで、どの人生段階でも暮らせるか」へ転換することです。National Housing Stock Mapで住宅・インフラ・医療・災害リスクを一体的に可視化し、そこから政策を組み立てる構想が示されています。

Pip: 住宅を単体で売るのではなく、生活パッケージとして提供する。Move & Live Packageという発想は、前回の働き方編で出てきたRegional Talent Utilityとも接続されています。

Mara: 段階家賃の提案も重要です。所得が低いときは家賃を低く、上がれば緩やかに上げる——ただし「1円増えたら補助が突然なくなる」制度の崖は作らない設計です。

Pip: 「収入が増えると損をする」という逆インセンティブを設計で潰す。これは福祉政策全般に通じる論点ですね。

Mara: 高齢者の入居問題も同じ構造です。大家側のリスクを社会で引き受けるHousing Support Guaranteeを、居住支援法人・保険会社・医療介護が連携して担う。2025年施行の住宅セーフティネット法改正を土台に、対象を高齢者だけでなく低所得者・ひとり親・障害者・若者・外国人まで広げる方向性です。

Pip: ウィーン、シンガポール、オランダの事例も参照されていますが、共通するのは「住宅を国家の人口・家族政策として扱う」視点です。

Mara: ウィーンでは市民の約50パーセントが補助住宅に暮らし、対象を極端な低所得層だけに限定していない。オランダでは住宅協会が高齢者住宅から地域管理まで担っている。そこから導かれるのがMixed Income Housingの発想——低所得・中所得・子育て・高齢者を混在させることで、貧困の地域集中を防ぐ考え方です。

Pip: 住宅団地をつくるのではなく、生活圏をつくる。モデル住宅Cityの実証構想がそれを具体化しています。

Mara: 最終的な問いはシンプルです。「不足しているのは住宅そのものではなく、人と住宅をつなぐ仕組みなのかもしれません。」住宅政策の成功指標を新築着工戸数から「安心して暮らせる人の割合」へ変える——それが今回の核心です。

Pip: 介護や医療や教育と住宅が、生活圏という単位でようやく一つにつながる。

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Mara: 住宅、少子化、介護、働き方——それぞれ別の政策に見えていたものが、「生活圏」という設計単位で接続されていく。

Pip: 家が人生を縛る社会ではなく、人生に合わせて家を選び直せる社会。次回はどの領域がつながってくるか、引き続き注目です。

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