所得税の「物価連動」は、基礎控除だけで十分か
――178万円へ引き上げた後も、税の基準額を古くしない仕組みを考える
2026年9月29日|2035日本再設計プロジェクト|税・家計・制度編
2026年、日本の所得税は大きく変わりました。
いわゆる「103万円の壁」と呼ばれていた所得税の負担開始水準は、2025年の改正を経て、2026年度税制改正でさらに見直されました。
給与収入だけの人であれば、2026年分の所得税について、一定の条件の下で年収178万円まで所得税がかからない仕組みになっています。国税庁
しかし今回、私が注目したいのは、
「178万円になった」
という数字そのものではありません。
もっと重要な変化があります。
2026年度税制改正で政府は、
基礎控除などを物価上昇に合わせて見直す仕組み
を正式に導入しました。
税制改正時点の直近2年間の消費者物価指数の上昇率を使い、
基礎控除の本則部分。
給与所得控除の最低保障額。
を調整するという考え方です。
2026年・2027年分については、2023年10月から2025年10月までのCPI上昇率6.0%を踏まえ、
基礎控除本則は58万円から62万円へ。
給与所得控除の最低保障額は65万円から69万円へ。
それぞれ引き上げられました。財務省
これは非常に大きな政策転換だと思います。
なぜなら、
これまでの日本では、
物価が上がっても、
税制の「○万円」という数字が長く据え置かれ、
ある時まとめて政治判断で改正する、
ということが多かったからです。
では、
この物価連動を、
基礎控除だけで終わらせてよいのでしょうか。
所得税には、
税率が変わる所得区分。
扶養などの所得要件。
非課税限度額。
さまざまな固定金額があります。
今日のJapan Compassでは、
物価によって税負担が知らないうちに重くなる「隠れた増税」を、どう防ぐか
を考えます。
Executive Summary
先に結論です。
2026年度税制改正で、日本はすでに
「物価に合わせて所得税の基準額を見直す」
という方向へ動き始めています。
これは評価すべき前進です。
政府は、基礎控除本則と給与所得控除最低保障額について、直近2年間のCPI上昇率を用いて見直す基本ルールを示しました。財務省
一方で、
所得税の税率が変わる区分は、
2026年時点でも、
課税所得195万円。
330万円。
695万円。
900万円。
1,800万円。
4,000万円。
という固定金額です。国税庁
物価と賃金が上昇しても、
これらが動かなければ、
生活水準がほとんど変わっていない人でも、
名目賃金の上昇によって、
より高い税率の区分へ近づいていきます。
これは一般に「ブラケット・クリープ」と呼ばれる現象です。
OECDも、高いインフレ下で税制が自動的に物価調整されない場合、名目賃金の上昇によって労働者が高い税率区分へ押し上げられたり、控除や給付の実質価値が低下したりすることで、労働への実効税負担が上昇し得ると指摘しています。OECD
そこでJapan Compassでは、
所得税を二つに分けて考えることを提案します。
第一は、
実質価値を維持するための数字。
基礎控除。
給与所得控除最低保障額。
税率区分。
などです。
ここは、一定のルールで物価調整する。
第二は、
政策判断を含む数字。
配偶者控除。
扶養。
特別控除。
住宅政策。
子育て支援。
などです。
ここは機械的に動かさず、
政策目的、所得再分配、財源を含めて国会で判断する。
つまり、
税制のすべてを自動化するのではなく、物価調整と政策判断を分ける
という考え方です。
1|そもそも、なぜ物価が上がると税負担が増えるのか
例えば、
去年の年収が400万円。
今年の年収が408万円。
だったとします。
2%の賃上げです。
しかし物価も2%上がっていれば、
実質的な購買力はほとんど変わりません。
ところが税制上の控除額や税率区分が固定されていれば、
名目所得だけは増えます。
すると、
課税される所得が増える。
控除の実質価値が小さくなる。
より高い税率区分へ近づく。
ということが起こります。
つまり、
生活は豊かになっていないのに、税負担だけが増える
可能性があります。
財務省自身も2025年度税制改正の説明で、
基礎控除が定額であるため、物価上昇時には実質的な所得税負担が増えることを課題として明記しています。財務省
2|日本は2026年に、その問題へ一歩踏み込んだ
2026年度税制改正は、
この問題への回答として、
「物価上昇に連動して基礎控除等を引き上げる仕組み」
を創設しました。
政府の基本方針では、
税制改正時の直近2年間のCPI総合指数上昇率を、
基礎控除本則へ反映。
給与所得控除最低保障額も同じ方式で調整。
端数は万円単位で整理。
初年度は源泉徴収実務への影響を抑えるため、年末調整から反映。
という形です。財務省
これは、
毎年ゼロから
「何万円引き上げるか」
を政治交渉だけで決める方式から、
一定の物差しを持つ方式
へ変わったということです。
私はこの方向性には賛成です。
3|178万円は「物価連動」だけでできた数字ではない
ただし、
178万円という数字を、
単純に物価連動の結果だと理解すると間違います。
2026年度税制改正では、
物価調整によって、
基礎控除本則と給与所得控除最低保障額を引き上げた結果、
所得税の負担開始水準はまず168万円相当になりました。
そこへ、
中低所得者への配慮や就業調整対策として特例を追加し、
178万円まで引き上げています。
この追加部分には時限措置も含まれます。財務省
つまり、
物価調整と政策減税が一つの数字の中に入っている
のです。
ここを分けて理解することが大切です。
4|そして、物価は今も動いている
2026年8月の全国消費者物価指数は、
総合指数で前年同月比1.9%上昇。
生鮮食品を除く総合で1.7%上昇。
生鮮食品とエネルギーを除く総合で1.9%上昇でした。統計局
2026年度税制改正をしたから、
物価問題が終わったわけではありません。
むしろ、
インフレが続く社会では、
税制の固定された数字は、
また少しずつ古くなっていきます。
だから大切なのは、
「一度178万円にした」
ことではなく、
これからどう更新するか
です。
5|基礎控除を動かしても、税率区分は固定されている
現在の所得税率は、
5%から45%までの7段階です。
課税所得について、
195万円未満。
330万円未満。
695万円未満。
900万円未満。
1,800万円未満。
4,000万円未満。
といった区分で税率が変わります。国税庁
ここで重要なのは、
これは給与収入そのものではなく、
各種控除を差し引いた後の課税所得だということです。
しかし金額そのものは固定されています。
基礎控除を物価調整しても、
税率区分を固定したままにすると、
物価と賃金が上がり続けた場合、
少しずつ高い税率帯へ所得が移っていきます。
だから、
基礎控除だけを物価調整すれば、
すべて解決するわけではありません。
6|これは「減税するか増税するか」とは少し違う話
物価調整を議論すると、
すぐに、
減税。
税収不足。
財源。
という議論になります。
もちろん財政への影響はあります。
しかし、
物価調整の本来の目的は、
税負担を軽くすることではありません。
同じ実質所得なら、税負担も大きく変えない
ことです。
例えば物価と賃金が5%上昇した時、
税制の数字も5%調整する。
これは、
実質的な税負担を維持する考え方です。
政府も2026年度改正について、
今回の物価連動部分は「物価調整」であることから、特段の財源確保措置を要しないという整理をしています。財務省
ただし、
これは
「財政に影響がない」
という意味ではありません。
固定した場合と比較すれば、
税収は少なくなります。
したがって、
将来の税収見通しでは、
固定した場合の税収
と、
実質税負担を維持した場合の税収
を両方示すべきです。
7|海外事例① 米国は毎年、税の数字を動かす
米国では、
連邦所得税の税率区分。
標準控除。
その他多数の税制上の金額が、
毎年インフレ調整されています。
IRSは2026年分についても、
60を超える税制項目の物価調整を公表しました。
例えば2026年の単身者の標準控除は1万6,100ドル。
税率区分も2025年から引き上げられています。内国歳入庁
ポイントは、
税率そのものを毎年変えるのではありません。
5%を6%へ。
20%を22%へ。
という変更ではなく、
その税率が始まる所得水準を動かす
のです。
税率の政治判断と、
物価調整を分けています。
8|海外事例② カナダも税率区分を物価調整している
カナダでは、
2026年の連邦所得税について、
インフレ調整係数は2.0%。
税率区分や基礎的な人的控除などが、この係数を使って更新されています。Canada
2026年の連邦税率では、
最初の区分は5万8,523カナダドルまで。
その上は11万7,045ドルまで。
というように、所得区分自体が毎年更新されています。Canada
つまり、
物価上昇だけを理由に、
意図せず高い税率区分へ入りにくくする仕組みがあります。
9|海外事例③ 英国は「自動調整を止める」こともある
一方、
自動物価連動にも政治判断は残ります。
英国では、
所得税のPersonal Allowanceや基本税率上限について、
本来はCPI連動する制度があります。
しかし政府は財政政策として、
主要な税負担開始額・税率区分を2027-28年度まで固定しました。
英国政府自身が、
法律上はCPI連動が基本である一方、
今回の措置では一時的にその連動を停止することを説明しています。GOV.UK
これは重要な例です。
自動物価調整を採用しても、
国会が何も決められなくなるわけではありません。
原則は自動。例外は政治が説明して決める。
という設計も可能です。
10|日本で全部を自動化する必要はない
では、日本もすべての税制上の金額をCPI連動させればよいのでしょうか。
私はそうは思いません。
例えば、
住宅ローン控除。
配偶者控除。
扶養控除。
企業向け投資減税。
子育て関連控除。
には、
単なる物価調整ではなく、
政策目的があります。
住宅を支援したい。
子育てを支援したい。
働き方への中立性を確保したい。
所得再分配を強めたい。
といった判断が含まれています。
これらまで自動で動かせば、
政策目的が見えにくくなります。
だから、
税制上の数字を二つに分類します。
| 分類 | 例 | 考え方 |
|---|---|---|
| 実質価値を守る数字 | 基礎控除本則、給与所得控除最低保障額、税率区分 | 物価調整を原則化 |
| 政策判断を伴う数字 | 配偶者・扶養・住宅・特別控除等 | 国会・税制改正で個別判断 |
こうすれば、
物価対策と政策減税を混同しにくくなります。
賛成論|物価連動を広げるメリット
最大のメリットは、
「知らないうちの増税」を減らせることです。
税率を上げていない。
制度も変えていない。
でも物価と名目賃金が上がった結果、
税負担率が上がる。
これでは、
国民から見れば何が起きているのか分かりにくい。
物価連動ルールがあれば、
税率を引き上げたいのであれば、
政府は明確に
「税率を上げます」
と説明する必要があります。
財政の透明性が高まります。
もう一つは、
税制改正を巡る政治的な争点を整理できることです。
物価分の調整なのか。
実質的な減税なのか。
所得再分配なのか。
を分けて議論できます。
企業にとっても、
給与計算や源泉徴収の将来変更が予測しやすくなります。
慎重論|物価連動には弱点もある
一方、
自動化には問題があります。
第一に、
物価が上がるほど税収の自然増を抑えるため、
財政余力が小さくなる可能性があります。
物価高の時には、
政府自身の支出も増えます。
公共工事。
医療。
介護。
公務員人件費。
調達。
も高くなる。
その時に税制まで自動的に税収増を抑えることが、常に正しいとは限りません。
第二に、
CPIは一つの平均です。
高齢者。
子育て世帯。
単身者。
都市部。
地方。
で実際に購入するものは違います。
第三に、
毎年細かく数字を変えると、
給与計算システムや企業の源泉徴収事務が複雑になります。
だから日本政府が2026年度改正で、
直近2年間のCPI。
万円単位の調整。
初年度は年末調整から反映。
という比較的穏やかな設計を選んだのは合理性があります。財務省
Japan Compass政策提案
「二層型」の物価調整ルールにする
Japan Compassでは、
2026年度に始まった制度を廃止して、
別の新制度を作ることは提案しません。
むしろ、
現在の
直近2年間のCPIで基礎控除等を調整する方式
を土台にします。
その上で、
三つの改善を提案します。
① 税率区分も、定期的な物価調整の検証対象にする
基礎控除だけでなく、
195万円。
330万円。
695万円。
などの所得税率区分についても、
物価上昇によるブラケット・クリープがどれだけ起きているか、
2年ごとに試算します。
自動的に必ず引き上げる、
と最初から決める必要はありません。
まず、
「連動した場合」
「固定した場合」
を公表する。
そこから始めます。
② 物価調整報告を税制改正前に公開する
毎年の税制改正前に、
財務省が、
CPI上昇率。
現在の基礎控除。
税率区分。
各種固定基準額。
据え置いた場合の実質価値。
物価調整した場合の税収影響。
を一覧化する。
これにより、
政治家も国民も、
「減税なのか、物価調整なのか」
を判断しやすくなります。
③ 政策特例は自動化しない
178万円の中には、
物価調整だけでなく、
中低所得者への政策的な上乗せがあります。
こうした部分は、
物価連動とは分けます。
政策目的がある措置は、
効果。
財源。
所得階層別影響。
を見て、
その都度判断する。
この線引きを明確にします。
社会保険の「壁」とは分けて考える
ここは#047との違いでもあります。
所得税の基準額を物価連動しても、
社会保険の問題が自動的に解決するわけではありません。
健康保険。
厚生年金。
扶養認定。
保険料。
には、
税とは違う財政構造があります。
保険給付と負担の関係があります。
だから、
所得税が178万円になったから、
社会保険も178万円に合わせる、
という考え方にはしません。
税。
社会保険。
給付。
は、
相互に影響しますが、
同じ数字に揃えることと、制度を整合させることは違います。
社会保険の基準は、
#047で扱った就業調整への影響と、
年金・医療財政を含めて別に検証する必要があります。
財源・実施主体・制約
実施主体は、
財務省。
国税庁。
国会。
給与計算を行う企業・事業者。
給与計算ソフト事業者。
です。
個人住民税まで対象を広げる場合は、
総務省。
自治体。
地方財政。
も関わります。
Japan Compassでは、
まず国の所得税から整理することを提案します。
個人住民税には地方自治体の安定財源という役割があるため、
所得税と同じ式をそのまま当てるべきではありません。
財政面では、
物価調整は無料ではありません。
名目額を固定した場合に比べれば、
将来の税収は少なくなります。
一方、
名目所得が増えただけで税収が自然増することを、
「増税ではないから問題ない」
と扱うことにも疑問があります。
そこで予算では、
二つの数字を併記します。
名目固定を続けた場合の税収。
実質税負担を維持した場合の税収。
差額を見せる。
それから、
必要な財源を議論する。
これが透明だと思います。
2035ロードマップ
2026~2027年|新しい物価連動制度を検証する
まず、
2026年度税制改正で始まった制度を正確に動かします。
基礎控除。
給与所得控除最低保障額。
年末調整。
源泉徴収。
にどれだけ事務負担が生じたかを確認します。
企業規模別に、
給与計算システムの変更コストも把握します。
2028~2029年|税率区分を含む「固定金額一覧」を作る
所得税の中に、
何年据え置かれている数字があるのか。
一覧化します。
税率区分。
人的控除。
非課税限度額。
経費基準。
を分けます。
その中から、
純粋に実質価値を維持する目的の数字を特定します。
2030~2031年|税率区分の物価調整を実証する
過去データを使い、
税率区分をCPI連動していた場合、
各所得階層の税負担がどうなったか。
税収がどう変わったか。
を検証します。
高所得者だけが有利になる設計になっていないかも確認します。
2032~2033年|所得税・住民税・社会保険の境界を整理する
税率区分を調整すると、
住民税。
社会保険料。
各種給付。
との違いがより目立ちます。
ここで、
「全部同じ数字にする」
のではなく、
何のための基準なのかを整理します。
2034~2035年|毎年「税制の実質価値」を公開する
最終的には、
税率だけを見る税制から、
税率と基準額の実質価値を同時に見る税制
へ進めます。
政府は毎年、
物価。
賃金。
所得分布。
税負担。
を踏まえ、
固定金額が実質的にどれだけ変化したかを公表する。
国会が物価調整を停止する場合には、
財政上の理由を説明する。
米国やカナダのような自動性と、
英国のような政治判断の余地を、
日本に合う形で組み合わせます。
2035日本再設計白書での位置付け
今回の#058は、
第三部「経済」
に位置付けます。
#047では、
「106万円の壁」の賃金要件撤廃後も、
社会保険。
扶養。
手取り。
就業調整。
の問題が残ることを扱いました。
#051では、
子ども・子育て支援金を、
なぜ医療保険の徴収ルートで集めるのかを検証しました。
特別版#001では、
日本の政府債務。
税収。
資産。
財政全体を扱いました。
今回の問いは、
それらとは違います。
税率を変えなくても、物価だけで実質税負担が変わる問題
です。
制度そのものを、
インフレのある経済に合わせられるか。
そこを検証します。
今日の提言
長い間、
日本では、
物価があまり上がらない時代が続きました。
だから、
103万円。
48万円。
195万円。
という数字を、
長く固定していても、
大きな問題が見えにくかった。
しかし、
その時代は変わりました。
2026年8月も、
物価は前年を上回っています。統計局
だから税制も、
「数字を一度決めたら終わり」
では続きません。
今回の2026年度税制改正で、
政府は初めて、
物価連動を明確な仕組みとして導入しました。
ここは大きな前進です。
次に考えるべきなのは、
どこまでを物価連動にするのか
です。
私は、
税率そのもの。
子育て支援。
住宅政策。
所得再分配。
まで自動化する必要はないと思います。
そこは政治が決めるべきです。
しかし、
同じ生活水準なのに、
物価と名目賃金が上がっただけで、
税負担が少しずつ重くなる。
これはできるだけ防いだ方がよい。
そのために、
基礎控除。
給与所得控除最低保障額。
そして税率区分。
について、
同じ物差しで定期的に確認する。
変える必要がなければ変えない。
変えるなら、
なぜ変えるのかを説明する。
私は、
これがインフレ時代の税制に必要な基本ルールだと思います。
読者への問い
あなたの給料が、
今年3%上がったとします。
でも、
物価も3%上がった。
生活は、
ほとんど楽になっていない。
それでも税金だけ増えたら、
どう感じるでしょうか。
一方、
物価が上がるたびに自動的に控除や税率区分を引き上げれば、
国の税収は伸びにくくなります。
社会保障。
防衛。
教育。
インフラ。
の財源も必要です。
では、
どこまでを自動的に物価調整し、
どこからを政治判断にするべきでしょうか。
私は、
一番大切なのは、
税負担が変わった理由を、国民が分かること
だと思います。
物価によって増えた税金なのか。
政策として増税したのか。
減税したのか。
所得再分配を強めたのか。
その違いが見える。
税制は複雑でも、
負担が変わった理由まで複雑にする必要はありません。
データ出典・参考資料
財務省「令和8年度 税制改正(国税)等について」
2026年3月31日に令和8年度税制改正法が成立。直近2年間のCPIを基礎控除本則・給与所得控除最低保障額へ反映する仕組み、2026・2027年分に使う6.0%の物価上昇、基礎控除58万円→62万円、給与所得控除最低保障額65万円→69万円、所得税負担開始水準178万円等を確認。
令和8年度 税制改正(国税)等について|財務省
国税庁「パート収入はいくらまで所得税がかからないか」
2026年分について、給与所得控除74万円と基礎控除104万円の適用対象となる場合、給与収入178万円以下で他の所得がなければ所得税がかからないことを確認。
パート収入はいくらまで所得税がかからないか|国税庁
国税庁「所得税の税率」
2026年4月1日現在、課税所得195万円、330万円、695万円等の固定金額で5%~45%の7段階税率が設定されていることを確認。
所得税の税率|国税庁
総務省統計局「2026年8月 消費者物価指数」
2026年9月18日公表。総合指数前年同月比1.9%、生鮮食品を除く総合1.7%、生鮮食品・エネルギーを除く総合1.9%。
消費者物価指数 2026年8月|総務省統計局
OECD「Taxing Wages 2024」関連発表
物価上昇下で自動インデックスがない場合、名目賃金増により高い税率区分へ移り、控除・給付の実質価値も低下することで労働税負担が上昇し得ることを確認。
Labour taxes rise across OECD countries amid persistent inflation|OECD
米国内国歳入庁 IRS「Tax year 2026 inflation adjustments」
2026年分について、標準控除・税率区分など60超の税制項目をインフレ調整。
2026 tax inflation adjustments|IRS
Canada Revenue Agency「Payroll Deductions Tables 2026」
2026年の連邦インデックス係数は2.0%。税率区分、personal amounts等をCPIに基づき調整していることを確認。
Federal tax indexing for 2026|Canada Revenue Agency
HM Revenue & Customs「Income Tax Personal Allowance and basic rate limit」
英国では本来CPI連動するPersonal Allowance・基本税率上限について、2026-27・2027-28年度まで固定する措置を確認。
Income Tax Personal Allowance and basic rate limit|GOV.UK
※本稿は2026年9月29日時点で確認できる公表資料に基づきます。2026年度税制改正で**基礎控除本則と給与所得控除最低保障額を物価上昇に合わせて見直す仕組みはすでに創設されています。**したがって本稿は「所得税を物価連動させる制度を新設しよう」という提案ではありません。
Japan Compass独自提案は、現在の2年CPI方式を出発点に、税率区分を含む主要な固定金額について物価調整した場合の影響を定期的に公表し、実質価値維持を目的とする数字と、所得再分配・子育て・住宅など政策判断を伴う数字を分離すること。あわせて「固定した場合」と「物価調整した場合」の所得階層別・税収別影響を税制改正前に公開することです。

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