Japan Compass#064

2026年改正刑事訴訟法を、冤罪救済と手続の公正から検証する

再審の証拠開示は、どこまで広げるべきか

――2026年改正刑事訴訟法を、冤罪救済と手続の公正から検証する

2026年10月5日|2035日本再設計プロジェクト|司法・制度への信頼編

一度、裁判が確定した。

その判決を、後から簡単にひっくり返してよいわけではありません。

判決の安定性は、司法制度に必要です。被害者や遺族にとっても、何度も同じ事件が争われ続けることには大きな負担があります。

しかし、確定判決に重大な誤りがあり、新しい証拠によって無罪の可能性が生じたなら、それを訂正する道も必要です。

そのためにあるのが、

再審

です。

そして2026年、日本の再審制度は大きく変わりました。

政府が提出した刑事訴訟法改正案は、2026年6月16日に衆議院で修正され、7月17日に成立。7月24日に法律第67号として公布されました。再審請求審における証拠提出命令、審理手続、裁判官の除斥などについて、これまでより詳細なルールを法律上明文化したものです。今回扱う証拠提出命令などの主要部分は、一部の先行施行規定を除き、公布から1年以内の政令で定める日に施行されることになっています。法務省

大きな前進です。

ただし、法律を読むと、一つ非常に重要な仕組みがあります。

裁判所は、検察官が持つ証拠の中から一定範囲の**「標目の一覧表」――つまり証拠のリスト――を提示させることができます。**

ところが、その一覧表は、

再審を求める本人や弁護人には見せない

という設計になっています。

裁判所だけが確認します。参議院

ここに、今日の問いがあります。

再審の証拠開示は、裁判所が見るところまでで十分なのか。

それとも、

証拠そのものを無制限に公開する必要はなくても、

「どんな証拠が存在するのか」という一覧だけは、一定の条件で再審請求人側にも見えるようにするべきなのか。

今日は、この一点を考えます。


Executive Summary

結論から言います。

Japan Compassは、

2026年改正は大きな前進であり、施行前から「全面開示へ再改正すべき」とは考えません。

一方で、

証拠一覧表を裁判所だけが見て、再審請求人・弁護人が一切確認できない仕組みについては、施行後の実績を基に必ず再検証するべき

だと考えます。

理由は明確です。

再審を求める側が、

「この証拠を出してください」

と請求するためには、

原則としてその証拠の存在をある程度知っている必要があります。

しかし、

自分が存在を知らない証拠は、

具体的に請求することが難しい。

これが、

証拠開示の根本的な問題です。

今回の改正法は、この問題に対応するため、裁判所が検察官へ一定範囲の証拠一覧表を提示させられるようにしました。しかし法律は、その一覧を再審請求人や弁護人に閲覧・謄写させることを認めていません。つまり、「未知の証拠を探す力」は裁判所には強く与える一方、請求人側には直接与えない設計です。参議院

これは合理性のない制度ではありません。

一覧表そのものにも、

被害者や証人の情報。

第三者の個人情報。

捜査手法。

別事件に関する情報。

機密性の高い情報。

が含まれる可能性があります。

すべてを無条件に開示すれば、新しい被害が生じる可能性があります。

だから、

「全部見せるか、全部隠すか」

の二択にする必要はありません。

Japan Compassが次の検討課題として提案するのは、

裁判所が範囲を管理した上で、必要な場合に限り、個人情報等を墨消しした「限定的な証拠一覧」を再審請求人・弁護人が閲覧できる制度

です。

証拠そのものを自動的に渡すのではありません。

まず一覧で、

「何が存在するか」

を知る。

その中から、

再審理由に関係する可能性のある証拠を請求する。

実物を提出させるかどうかは、

裁判所が関連性、必要性、開示による弊害を考えて判断する。

この二段階にします。

ただし、現在の改正法は一覧表を「何人にも閲覧又は謄写させることができない」と定めているため、この仕組みを実現するには単なる運用変更ではなく、将来の法改正が必要です。参議院

だからこそ、

今すぐ結論を出すのではありません。

新制度をまず動かす。

実績を測る。

そして改正法自身が定めている施行後5年ごとの見直しで、証拠一覧へのアクセスを主要な検証項目にする。

これが今日の提案です。参議院


現状|2026年改正で、再審手続はどう変わったのか

今回の改正で重要なのは、

単に「証拠開示が増えた」

ことではありません。

再審請求の審理構造そのものが、以前より明確になりました。

新しい制度では、裁判所が再審請求を受けると、まずその請求について調査します。

その結果、

形式的に要件を満たさない。

再審理由に該当しないことが明らかである。

という場合は棄却。

逆に、

再審理由があることが明らかな場合は、その段階で再審開始を決定できます。

そのどちらでもない場合、

裁判所は、

「審判開始の決定」

をします。

ここで注意したいのは、

「審判開始」と「再審開始」は別物だということです。

審判開始は、

再審を認める決定ではありません。

「ここから事実や証拠を本格的に調べる必要がある」

という段階へ入る決定です。

そして裁判所は、この審判開始後でなければ事実の取調べを行えません。参議院

制度としては、

入口の調査

と、

本格的な審理

を分けたわけです。


証拠提出命令は、審判開始後に使われる

今日の中心となるのが、

新設される刑事訴訟法445条の2です。

裁判所は、

再審理由との関連性。

その証拠を提出させる必要性。

提出によって生じるおそれのある弊害。

を考慮し、

相当だと判断すれば、

再審請求人や弁護人の請求、または職権で、

検察官に証拠の提出を命じることができます。

法律上は、裁判所が相当と認めた場合には提出を命じる仕組みです。さらに附則では、対象となる「再審理由に関連する証拠」の範囲を不当に狭くしないよう留意することも明記されました。参議院

これは重要です。

これまで再審請求審の証拠開示をめぐっては、

裁判所ごとの訴訟指揮や個別判断への依存が大きい、

という問題が長く議論されてきました。

2026年の国会審議でも、

再審手続で検察官の証拠開示義務を明文化する必要性や、

検察官が保有する証拠をどこまで提出させられるかが論点となっています。参議院

少なくとも、

「証拠を出すかどうかは完全に任意」

という状態から、

法律上の判断基準を持つ仕組みへ進んだことには意味があります。


では「存在を知らない証拠」はどう探すのか

ここが、

今回もっとも重要な部分です。

再審請求人が、

「この鑑定書を出してください」

と求めることはできます。

しかし、

その鑑定書が存在すること自体を知らなければ、

請求することができません。

そこで新法445条の3は、

裁判所が必要と認めた場合、

検察官に対して、

裁判所が指定した範囲に属する証拠について、

証拠の標目をまとめた一覧表

を提示させられるようにしています。

つまり裁判所は、

「この事件について、どんな証拠を持っていますか」

と一定範囲を一覧で確認できるようになります。

ところが、

その次の規定で、

裁判所はその証拠や一覧表を、

何人にも閲覧・謄写させることができない

とされています。参議院

再審請求人。

弁護人。

検察官以外の第三者。

全員です。

一覧表は、

あくまで裁判所が証拠提出命令を判断するための内部材料という設計です。


原因|「知らない証拠」をどう扱うかが難しい

これは、

単なる情報公開の問題ではありません。

再審制度には、

構造的な情報格差があります。

捜査段階では、

警察や検察が大量の資料を集めます。

そのすべてが、

通常の公判で証拠として提出されるわけではありません。

確定判決から何年、何十年もたって再審を求める場合、

弁護側が事件記録の全体像を把握することはさらに難しくなります。

もし、

有罪判決と矛盾する可能性のある資料が存在していても、

請求人側が存在を知らなければ、

「提出してください」

という請求にたどり着けません。

この問題は、

「証拠を出してもらえるか」だけではなく、「何があるか分からない」こと

にあります。

だから、

一覧表には大きな意味があります。


一方で、証拠一覧表も「安全な情報」ではない

では、

一覧表をそのまま弁護側へ渡せばよいのでしょうか。

ここも慎重に考える必要があります。

例えば、

証拠の名称だけで、

証人の存在が分かることがあります。

捜査協力者。

被害者。

未成年者。

別事件の関係者。

医療情報。

通信記録。

住所や勤務先。

こうした情報が含まれる可能性があります。

さらに、

「どんな捜査をしたか」

そのものが分かれば、

捜査手法や捜査対象に関する機微情報が明らかになることも考えられます。

したがって、

証拠内容を開示しないとしても、

一覧表だから無害とは限りません。

今回の改正法が、

提出された証拠の複製等について適正な管理を求め、

再審手続など以外の目的で使用することを制限し、

一定の違反に罰則まで設けたのは、

こうした二次利用による被害を防ぐ意図があると考えられます。参議院

救済のための証拠アクセスと、

被害者・証人・第三者の保護。

両方が必要です。


賛成論|一覧まで見えるようにするメリット

再審請求人側へ一定範囲の一覧を見せる最大の利点は、

未知の証拠を具体的な請求へ変えられること

です。

例えば一覧に、

「現場写真」。

「別人の指紋鑑定」。

「追加の供述録取書」。

「別の専門家による鑑定資料」。

などがあることだけ分かれば、

弁護側は、

なぜその証拠が再審理由と関係する可能性があるのかを説明できます。

裁判所も、

抽象的な

「ほかに何か証拠があるはずだ」

という請求ではなく、

具体的な証拠について必要性を判断できます。

結果として、

無制限の証拠探索ではなく、

むしろ争点を絞れる可能性があります。

また、

裁判所ごとの運用差を小さくする効果も期待できます。

同じ種類の事件でも、

裁判官の訴訟指揮によって証拠開示の範囲が大きく変わるようでは、

制度への信頼が損なわれます。


慎重論|全面開示は、別の不公正を生む可能性がある

しかし、

「検察が持つ証拠はすべて一覧も内容も開示する」

という制度には問題があります。

古い大規模事件では、

証拠資料が膨大になる可能性があります。

無関係な第三者の個人情報が大量に含まれていることもある。

被害者や証人が、

事件から長い年月を経て再び接触や報道の対象になる可能性もあります。

さらに、

提出された大量の資料を整理するだけで、

裁判所。

検察。

弁護側。

すべてに相当な作業が発生します。

証拠開示が広ければ広いほど公正、

とは限りません。

情報量が大きすぎれば、

本当に重要な証拠が埋もれることさえあります。

再審は、

通常の裁判を最初からもう一度繰り返す制度ではありません。

確定判決を覆すべき理由があるかを判断する、

非常救済手続です。

この性格も維持する必要があります。


海外事例①|英国は「独立機関が証拠を集める」

英国のイングランド、ウェールズ、北アイルランドには、

Criminal Cases Review Commission(CCRC)

があります。

司法の誤りが疑われる事件を独立して調査する公的機関です。

CCRCは、

1995年犯罪上訴法17条に基づき、

警察。

検察。

地方自治体。

社会福祉機関。

などの公的機関から情報を取得できます。

さらに18A条により、

私人や民間組織が持つ資料についても、

必要な場合はCrown Courtへ命令を求めることができます。

新たな証人への聞き取りやDNA鑑定なども可能です。Criminal Cases Review Commission

ただし、

ここで重要なのは、

申立人本人がすべての資料へ自由にアクセスする仕組みではない

ことです。

広い調査権限を持つ独立機関が、

必要な資料へアクセスする。

つまり、

「救済のための探索力」

と、

「情報を無制限に公開しないこと」

を分けています。

日本と制度構造が違うため、

CCRCをそのまま導入すべきだという話ではありません。

しかし、

信頼できる第三者が広く証拠を調べる

という考え方は参考になります。


海外事例②|ニュージーランドも「取得権限+秘密保護」

ニュージーランドにも、

独立したCriminal Cases Review Commissionがあります。

2019年法に基づく独立したCrown entityで、

有罪判決や刑について調査し、

司法の誤りのおそれがある場合には、

控訴裁判所へ事件を戻すことができます。刑事事件レビュー委員会

同委員会は、

関連する文書や物を提出すること。

情報を提供すること。

を個人や組織へ書面で求める法的権限を持ちます。

同時に、

委員会が取得した情報には秘密保持のルールが置かれ、

正当な理由なく外部へ開示することを制限しています。ニュージーランド法令

ここにも、

共通する考え方があります。

広く調べられることと、広く公開することは同じではない。

救済制度に必要なのは、

誰でも何でも見られる状態ではありません。

必要な人が、

必要な範囲の証拠へ到達できる状態です。


Japan Compass政策提案

「全面開示」ではなく、「限定した証拠一覧へのアクセス」を検証する

Japan Compassは、

改正法の施行前に、

証拠提出命令制度を白紙に戻すべきだとは考えません。

まず、

2026年改正を実際に運用します。

その上で、

次の見直し候補として、

裁判所が必要と認めた事件に限り、再審請求人・弁護人へ、限定・墨消しした証拠一覧を閲覧させる制度

を比較検討します。

イメージは次の通りです。

段階仕組み
① 範囲設定裁判所が事件・時期・証拠類型などから調査範囲を指定
② 一覧提出検察官が指定範囲の証拠一覧を裁判所へ提出
③ 安全確認裁判所が被害者・証人・第三者情報、捜査上の機微情報等を確認
④ 限定閲覧必要と判断した場合のみ、墨消しした証拠名・種類・作成時期等を再審請求人・弁護人へ提示
⑤ 個別請求弁護側が一覧から必要な証拠を特定し、理由を示して提出を請求
⑥ 裁判所判断現行法の関連性・必要性・弊害の基準で、実物を提出させるか判断

ポイントは、

④を入れるかどうか

です。

現在の法律にはありません。

そして、

すべての事件で必ず行う必要もありません。

裁判所が、

「一覧へのアクセスがなければ再審理由の検証が難しい」

と判断した場合に限る。

この形なら、

探索能力を高めつつ、

無制限な証拠開示を避けられます。


一覧に載せる情報も、最小限でよい

もう一つ重要なのは、

一覧の中身です。

証人の氏名。

住所。

詳細な供述内容。

まで書く必要はありません。

例えば、

証拠番号。

証拠の種類。

作成年月。

作成主体の大分類。

対象事項の大分類。

現在の保管状況。

といった、

証拠を特定するために最低限必要なメタデータ

だけでも意味があります。

「供述調書がある」

と分かることと、

その供述内容を読むことは、

まったく別です。

まず存在を知る。

内容を見る必要性は、

その次に裁判所が判断する。

この順番なら、

プライバシーと救済の両立がしやすくなります。


開示しない場合も、理由を分類して残す

すべての証拠を一覧へ出せないケースは当然あります。

例えば、

第三者の安全に重大な危険がある。

別事件の捜査へ具体的な支障がある。

国家安全保障上の問題がある。

法的な秘匿特権がある。

などです。

その場合も、

完全に存在を消してしまうのではなく、

裁判所内部では、

「どの理由で非表示にしたのか」

を記録します。

公開するのは個別内容ではなく、

匿名化した集計です。

これによって、

制度全体として、

どの程度の証拠が一覧から除外され、

どの理由が多いのかを後から検証できます。


まず測るべきなのは「何件開示したか」ではない

#060では、

制度を作った後、

「実施した」だけで終わらせず、

社会で何が変わったかを見る必要性を扱いました。

再審制度も同じです。

見るべきなのは、

証拠提出命令を何件出したかだけではありません。

重要なのは、

証拠提出によって新しい事実が見つかったか。

提出命令を求めたが対象証拠を特定できなかったケースがどれだけあったか。

一覧表を裁判所が利用した事件で、

その後の証拠提出範囲がどう変わったか。

審理期間が長くなったのか、短くなったのか。

被害者・証人の情報流出などの問題が生じたか。

です。

新制度の目的は、

証拠をたくさん出すことではありません。

正しい結論に必要な証拠へ、適切な時間で到達できること

です。


改正法には、すでに「5年見直し」が入っている

今回の法律には、

非常に重要な条項があります。

政府は、

施行後5年ごとに

改正後の制度の実施状況などを踏まえ、

再審制度の在り方を検討し、

必要があれば措置を講ずることになっています。参議院

これは、

#060でJapan Compassが提案した

「制度を作る時点で、次の見直しを予定しておく」

という考え方に近い仕組みです。

だから、

新しい検証制度を一から作る必要はありません。

既にある5年見直しを、

実質的なものにする。

そこで、

証拠一覧表を裁判所だけに限定したことが、救済にどんな影響を与えたか

を必ず検証項目にします。


財源・実施主体・制約

中心となる実施主体は、

法務省。

検察庁。

裁判所。

最高裁判所。

そして弁護士です。

今回の提案のために、

新しい「再審庁」や新組織を作ることまでは提案しません。

英国やニュージーランドの独立委員会制度は参考になりますが、

日本は2026年に裁判所中心の新制度を選択したばかりです。

まず、

その制度がどこまで機能するのかを確認するべきです。

追加費用として考えられるのは、

古い事件の証拠目録整理。

紙資料の検索・デジタル化。

墨消し処理。

裁判所・検察の確認作業。

記録管理。

などです。

ただし、

今回確認した政府資料には、

「限定した証拠一覧を請求人側へ閲覧させる場合の全国総コスト」

という試算はありません。

したがって、

年間何億円という数字は置きません。

特に古い事件では、

そもそも証拠が統一された電子台帳で管理されていない可能性があります。

ここは技術より、

記録の所在を確認する人的作業

が大きな制約になる可能性があります。


最大の制約|古い事件ほど「一覧そのもの」が作りにくい

現在発生する事件なら、

将来的にはデジタル証拠管理を前提に、

証拠一覧を作りやすくできます。

しかし再審で問題になる事件は、

何十年も前のものもあります。

紙。

写真。

フィルム。

録音テープ。

鑑定資料。

警察署や検察庁に分散した記録。

保管基準が現在とは違う資料。

こうしたものを、

「何が存在するか」

から確認する作業が必要になる可能性があります。

だから、

証拠一覧制度を強化するなら、

同時に、

証拠保存と目録管理

を考えなければなりません。

存在している証拠を開示する制度を作っても、

どこにあるのか分からなければ機能しないからです。


2035ロードマップ

2026~2027年|まず改正法を正確に実装する

証拠提出命令。

証拠一覧表。

審判開始。

審理終結。

決定。

それぞれについて、

裁判所・検察の運用基準と記録方法を整えます。

特に、

証拠一覧表を提示させた件数。

指定した証拠範囲。

証拠提出命令へつながった件数。

審理期間。

を、個人を特定できない形で後から集計できるようにします。

2027~2030年|制度が「未知の証拠」へ届いているかを見る

再審請求人側が具体的に証拠を特定できず、

提出命令にたどり着けないケースがどの程度あるのかを確認します。

裁判所が一覧表を使うことで、

その問題を十分補えているなら、

現行制度を維持する合理性があります。

逆に、

一覧を裁判所だけが見るために、

弁護側が重要な証拠について主張できないケースが繰り返されるなら、

制度を追加修正する根拠になります。

2030~2032年|5年見直しに向け、複数案を比較する

少なくとも、

現状維持。

裁判所による一覧確認の積極化。

限定・墨消しした一覧の弁護側閲覧。

独立第三者による証拠調査。

を比較します。

費用。

審理期間。

救済効果。

被害者・証人保護。

情報漏えい。

を同じ基準で評価します。

2032~2035年|必要なら法律を修正する

限定一覧の閲覧が必要だと判断された場合、

現行法445条の3が定める閲覧禁止そのものを改正します。

単なる裁判所規則や通達ではなく、

国会で権利と制約を明確に決めます。

その際には、

証拠内容の全面開示ではなく、

一覧。

個別証拠。

一般公開。

を明確に分ける。

これが重要です。


2035日本再設計白書での位置付け

今回の#064は、

第十部「日本の未来」

に位置付けます。

横断テーマは、

司法。

制度への信頼。

人権。

法制度です。

#048では、

「不起訴」という判断の理由がどこまで見えるべきかを扱いました。

これは、

犯罪捜査後、

起訴するかどうかという段階の透明性です。Japan Compass

#057では、

民事裁判のデジタル化が、

裁判を本当に速くし、

利用しやすくするのかを扱いました。Japan Compass

今回の#064は、

そのどちらでもありません。

一度確定した有罪判決に誤りがある可能性が生じた時、再審を求める人が必要な証拠へどう到達できるか。

という問いです。

司法制度への信頼は、

「判決を簡単に変えないこと」

だけでは成り立ちません。

同時に、

誤りが見つかった時に、

訂正できることも必要です。

その二つをどう両立するか。

第十部で扱うべき、

日本の制度そのものへの信頼に関わる問題だと考えます。


今日の提言

2026年の再審制度改正は、

長く議論されてきた分野に、

明確な手続を作ったという意味で大きな一歩です。

だから、

始まる前から

「不十分だから全部やり直そう」

とするべきではありません。

一方で、

一つだけ、

施行後に必ず確認する必要があります。

それは、

裁判所だけが証拠一覧を見れば、本当に必要な証拠へ到達できるのか。

ということです。

裁判官は、

事件記録を読めます。

一覧も確認できます。

しかし、

長年事件を調べてきた弁護士だからこそ、

「この証拠が重要だ」

と気付けることもあるでしょう。

その可能性まで、

最初から閉じる必要があるのか。

ここは実績で確かめるべきです。

私は、

証拠そのものを無制限に公開する必要はないと思います。

被害者。

証人。

第三者。

守るべき情報があります。

しかし、

どんな証拠が存在するのかすら分からない状態

と、

すべての証拠を無条件に渡す状態

の間には、

まだ多くの選択肢があります。

墨消しした一覧。

裁判所が認めた範囲だけの一覧。

閲覧のみ。

目的外利用禁止。

個別証拠は別途裁判所が判断。

そうした中間の制度を、

次の5年で検証する。

それが、

冤罪救済とプライバシーを両立させる現実的な道ではないでしょうか。


読者への問い

もし、

あなた自身や家族が、

「この判決には重大な誤りがある」

と考え、

再審を求めていたとします。

検察には、

裁判で使われなかった証拠が残っている。

裁判所は、

その証拠の一覧を見ることができる。

しかし、

あなたと弁護士は、

その一覧を見ることができない。

それでも、

「裁判所が確認してくれるのだから十分だ」

と思えるでしょうか。

一方で、

事件に関係する証拠一覧には、

被害者や証人の個人情報、

別事件に関する情報まで含まれているかもしれません。

それを、

再審を申し立てればすべて見られる制度にしてよいでしょうか。

必要なのは、

どちらか一方を選ぶことではないと思います。

無実を証明するために必要な情報へ届く権利と、関係者の安全やプライバシーを守る権利を、どこで両立させるか。

2026年の改正は、

その答えを完成させたというより、

ようやく、

具体的に検証できるスタートラインを作ったのではないでしょうか。


データ出典・参考資料

Japan Compass 公開サイト
2026年10月5日朝の確認時点で、#063「在職老齢年金は、高齢者の就労を妨げているか」(2026年10月4日)が最新通常記事として掲載されていることを確認。
Japan Compass

法務省「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」
政府提出は2026年5月15日、衆議院修正可決は6月16日、成立は7月17日、公布は7月24日(法律第67号)。一部を除く施行日は公布から1年以内の政令で定める日とされていることを確認。

参議院「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」法文
再審請求後の調査・審判開始、証拠提出命令、検察官保管証拠の標目一覧表、一覧表を第三者へ閲覧・謄写させない規定、証拠複製の管理・目的外使用制限、施行後5年ごとの制度検討、関連証拠の範囲を不当に狭くしない旨などを確認。

参議院法務委員会「第221回国会 第17回 質疑項目」2026年6月23日
再審手続における検察の証拠開示義務の法定化、検察官手持ち証拠の提出範囲等が国会審議上の論点となったことを確認。

英国 Criminal Cases Review Commission「Our powers and practices」
CCRCが独立した公的機関として司法の誤りを調査し、Criminal Appeal Act 1995のsection 17に基づき警察・CPS等の公的機関から資料を取得でき、section 18Aにより私人・組織の資料についてCrown Court命令を求められることを確認。

ニュージーランド Criminal Cases Review Commission Act 2019
Commissionが関連資料・情報の提出を求める権限を持つこと、取得情報について秘密保持・開示制限を設けていることを確認。

ニュージーランド Criminal Cases Review Commission「About us」
独立したCrown entityとして有罪判決・刑を調査し、司法の利益にかなう場合に控訴裁判所へ事件を付託できる制度であることを確認。

※本稿は2026年10月5日時点で確認できる公表資料に基づいています。改正刑事訴訟法は成立・公布済みですが、今回の主題である証拠提出命令・証拠一覧表等の主要規定について、法務省公表ページでは施行日を「公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日」としており、今回確認した資料から具体的な本体施行日は確認できませんでした。そのため、これらの規定を「すでに全面施行され、運用実績がある制度」とは扱っていません。法務省

Japan Compass独自の提案部分は、証拠の全面・無条件開示ではありません。まず2026年改正法を運用し、証拠提出命令・一覧表提示命令の件数、審理期間、証拠提出による判断変化、情報保護上の問題等を記録。その実績を基に、施行後5年見直しで、裁判所が必要と認める場合に限り、被害者・証人・第三者情報等を墨消しした証拠一覧を再審請求人・弁護人へ閲覧させる法改正を比較検討することです。個別証拠の提出は、引き続き裁判所が関連性・必要性・弊害を判断します。

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