Podcast Episode: Japan Compass#017

Pip: Japan Compassへようこそ。電気はコンセントの向こう側にある——そう思っていられるのも、あと何年かかもしれません。

Mara: 今回はHazzy Wildが書いた最新回を取り上げます。テーマは2035年の日本のエネルギーインフラ——発電から送電、蓄電、産業立地まで、電力網をシステムとして再設計できるかという問いです。

Pip: では、そのエネルギー安全保障の話から始めましょう。

2035年、電力網を国家インフラとして再設計する

Mara: 出発点はこの矛盾です。人口が減るなら電力需要も減るはず——しかし現実は逆の方向に動いている。AIやデータセンター、半導体工場、EVが電力需要を押し上げているからです。

Pip: 電力広域的運営推進機関の需要想定が、その数字を示しています。記事はこう書いています。「人口は減る。しかし電気はもっと必要になる」。

Mara: そしてその電力を支える構造自体が脆弱です。2024年度の日本のエネルギー自給率は16.3%。中東情勢、海上輸送、為替、LNG価格——国内では制御できない要因が電気代と産業競争力に直結する。エネルギー政策は環境政策である前に、国家安全保障の問題だという指摘です。

Pip: で、発電所を増やせば解決するかというと、そうでもない。

Mara: そこが核心です。記事が強調するのは送電網の問題です。北海道や東北には再エネのポテンシャルがある。でも東京まで送れなければ意味がない。送電線は「必要になってから作る」では遅いインフラなのです。

Pip: つまり発電の議論だけしていると、運べない電気が増えるという話ですね。

Mara: そこで提案されるのが発想の逆転です。政府のGX2040ビジョンにある「エネルギー供給に合わせた需要の集積」という考え方で、記事はこれを積極的に評価しています。電気を需要地へ運ぶのではなく、電気が余る地域へデータセンターやAI計算拠点、半導体関連産業を誘致する。

Mara: 原子力についても記事は踏み込んでいます。「原発か再エネか」という二択を取らず、安全を確認した既存炉を使いながら再エネ・蓄電・送電網を急速に拡大する——それが移行期の現実的な選択だという立場です。

Pip: 再エネにも弱点があると正直に書いているのが印象的でした。太陽光パネルや蓄電池のサプライチェーンを海外に頼れば、化石燃料依存を減らしても新しい海外依存を作るだけになりかねない。

Mara: 英国の事例も参照されています。英国の「Clean Power 2030 Action Plan」は発電所だけを議論せず、送電網、系統接続、蓄電、市場制度、人材、サプライチェーン、立地計画まで一体で扱っている。記事によれば、2030年までに必要な新規送電インフラは「過去10年間に建設した規模のおよそ2倍」です。

Pip: 日本に引き寄せると、「何パーセントを再エネにするか」という割合の議論だけでは足りない、ということになります。

Mara: 記事が最後に置く問いが、その先を指しています。災害で外部からの電力供給を失っても、病院、スーパー、通信、介護施設を地域の電力だけで数日間維持できるか。2035年の指標は「どれだけ発電できるか」から「社会を止めずに供給できるか」へ進化させる必要がある、という提案です。


Pip: 電力の話をしていたはずが、気づけば防災と地方創生と産業政策が全部つながっていた。

Mara: エネルギーを国家インフラとして設計するとは、そういうことなのだと思います。次回も引き続き、2035年の日本再設計を追っていきます。

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