Japan Compass#022

外国人材は「安い労働力」でいいのか

――人手不足時代の賃金・転職・キャリアを再設計する

2026年8月24日|2035日本再設計プロジェクト|外国人受入れ特別特集⑤

#018から続けてきた外国人受入れ特集では、

#018 受け入れルール
#019 犯罪・不法滞在・不法就労
#020 社会保障
#021 日本語・教育・社会参加

までを検証しました。

ここまで制度を追うと、もう一つ避けて通れない問題があります。

日本は外国人を「人材」として受け入れているのか。それとも、人手不足を埋める「労働力」として受け入れているのか。

2025年10月末、日本で働く外国人は257万1,037人となり、過去最多を更新しました。

外国人を雇用する事業所も37万1,215か所で過去最多です。厚生労働省

さらに2025年末の在留外国人数は412万5,395人。

初めて400万人を超えました。法務省

外国人労働者は、もはや日本経済の「一時的な補助」ではありません。

しかし、日本が外国人材を長期的に必要とするのであれば、

低賃金の仕事に固定する仕組みではなく、技能を身につけ、転職し、賃金を上げ、キャリアを築ける仕組み

へ変える必要があります。

今回は、外国人受入れ政策を「労働市場」という視点から再設計します。


Executive Summary

2025年10月末、日本の外国人労働者は257万1,037人

前年から26万8,450人、11.7%増加しました。

外国人を雇用する事業所も37万1,215か所に達しています。厚生労働省

在留資格別では、「専門的・技術的分野」の外国人労働者が86万5,588人と最も多く、前年比20.4%増。

一方、技能実習も49万9,394人います。厚生労働省

さらに2025年末の特定技能在留外国人は39万296人

前年末から10万5,830人増えました。法務省

数字を見る限り、日本の外国人労働市場はすでに急速な拡大局面に入っています。

問題は、

何人受け入れるか

だけではありません。

より重要なのは、

日本で働いた外国人の技能と賃金が上がっていく構造になっているか

です。

Japan Compassでは、外国人労働政策を、

「人手不足の穴埋め政策」

から、

「日本人と外国人の双方の生産性と賃金を上げる人材政策」

へ転換することを提案します。


1|外国人労働者257万人という現実

厚生労働省によると、2025年10月末の外国人労働者数は、

2,571,037人

でした。

前年比11.7%増。

外国人雇用状況の届出が義務化された2007年以降、過去最多です。厚生労働省

国籍別では、

ベトナム 60万5,906人
中国 43万1,949人
フィリピン 26万869人

などとなっています。

ベトナムだけで外国人労働者全体の23.6%を占めます。厚生労働省

この規模になると、

外国人労働政策=一部企業だけの問題

ではありません。

賃金。

住宅。

教育。

社会保障。

地方経済。

人口政策。

すべてに影響します。


2|在留外国人はすでに400万人を超えた

出入国在留管理庁によると、2025年末の在留外国人数は、

412万5,395人。

前年末から35万6,418人、9.5%増加しました。法務省

在留資格別では、

永住者 94万7,125人
技術・人文知識・国際業務 47万5,790人
留学 46万4,784人
技能実習 45万6,618人
特定技能 39万296人

となっています。法務省

つまり外国人受け入れを、

「一時的に日本へ働きに来てもらう制度」

だけで考えること自体が、現実と合わなくなりつつあります。


3|外国人が増える理由は「企業が必要としているから」

外国人労働者が増えている背景には、日本の構造的な人手不足があります。

介護。

建設。

製造。

農業。

宿泊。

外食。

物流。

小売。

多くの産業で働き手が不足しています。

外国人労働者がいなくなれば、すでに事業継続が難しくなる企業や地域もあります。

だから外国人受け入れそのものを、

「良い」「悪い」

という二択だけで考えることは難しくなっています。

問題はむしろ、

人手不足だから外国人を入れる、という政策をいつまで続けるのか

です。


4|「安い外国人労働力」に依存すると何が起こるのか

企業から見れば、人手不足を外国人で補うことには合理性があります。

しかし社会全体で考えると、注意が必要です。

もし、

人が足りない。

だから賃金を上げる。

設備投資をする。

自動化する。

業務を効率化する。

という企業努力より先に、

「外国人を入れればいい」

となれば、日本経済の生産性向上を遅らせる可能性があります。

さらに外国人が低賃金職へ集中すれば、

日本人の低賃金労働者との競争。

外国人自身の貧困。

社会保険料の負担能力。

住宅問題。

家族形成の困難。

といった別の問題を生みます。

外国人政策と賃金政策は切り離せません。


5|外国人と日本人を競わせる制度にしてはいけない

ここで重要なのは、

「外国人が日本人の仕事を奪う」

という単純な議論にしないことです。

問題は外国人そのものではありません。

企業が、

日本人ならこの賃金では集まらない。

だから外国人を採用する。

という使い方を続ければ、

労働市場全体の賃金上昇を抑える可能性があります。

逆に、

外国人にも日本人と同じ職務基準。

同じ最低賃金。

同じ労働法。

同じ社会保険。

同じキャリア評価。

を適用すれば、

企業が「安いから外国人を選ぶ」動機は小さくなります。

外国人受け入れを賃金抑制策にしない。

これは日本人労働者を守る意味でも重要です。


6|「同じ仕事なら同じ待遇」を原則にする

日本では外国人労働者にも最低賃金法や労働基準法などが適用されます。

しかし法律上の最低基準を守ることと、

キャリア形成できることは別です。

外国人が、

5年間働いても同じ仕事。

日本語が上達しても同じ仕事。

資格を取っても同じ賃金。

という状態なら、

優秀な人材ほど別の企業や別の国へ移ります。

必要なのは、

職務・技能・経験に応じて賃金が上がる仕組み

です。

国籍ではなく、

何ができるのか。

どんな資格を持っているのか。

どの程度の経験があるのか。

で評価する。

これは日本人にも必要な改革です。


7|特定技能は39万人まで増えた

2025年末の在留資格「特定技能」は、

390,296人

となりました。

前年末から10万5,830人増加しています。法務省

特定技能制度は、人手不足が深刻な産業で一定の技能を持つ外国人を受け入れる制度です。

この制度の拡大は、

日本が外国人労働者を「例外的な存在」ではなく、

労働市場の恒常的な担い手として必要としている

ことを示しています。

だからこそ、

「受け入れ人数」

だけで制度を評価してはいけません。


8|2027年、技能実習から「育成就労」へ

日本の外国人労働政策は、大きな転換期を迎えています。

長年続いた技能実習制度は見直され、

2027年度から新しい育成就労制度が始まる予定です。

従来の技能実習制度には、

国際貢献という制度目的と実際の人手不足対応との乖離。

転籍の制限。

悪質な送り出し機関。

高額な来日前費用。

労働者が職場を離れにくい構造。

などが指摘されてきました。

育成就労制度では、

外国人を育成し、特定技能へつなげる

という目的がより明確になります。

これは前進です。

しかし制度名を変えるだけでは意味がありません。


9|転職できることは「外国人保護」だけではない

外国人労働者の転職を認めると、

地方企業から都市部へ人材が流出する。

企業が教育してもすぐ辞めてしまう。

という懸念があります。

これは現実的な問題です。

一方で、転職できない労働者は、

賃金未払い。

ハラスメント。

長時間労働。

劣悪な住環境。

などがあっても職場を離れにくくなります。

さらに企業側にも、

「辞めない労働者」

がいることで待遇改善の圧力が弱くなります。

適度な労働移動は、

企業に賃金と労働環境を改善させる市場メカニズム

でもあります。


10|地方から外国人がいなくなる問題

ただし転職自由化には副作用があります。

地方の農業。

介護施設。

食品加工。

宿泊施設。

こうした産業で働いていた外国人が、

より賃金の高い東京、大阪、名古屋などへ移れば、

地方の人手不足はさらに深刻になります。

しかし、

地方から出られない制度にする

ことが解決策ではありません。

必要なのは、

地方でも働き続けるメリットを作ることです。

住宅費。

生活費。

家族支援。

教育。

地域ポイント。

資格取得支援。

キャリアアップ。

こうした条件を組み合わせる必要があります。

これは以前提案した2035共生City構想ともつながります。


11|海外事例

カナダは「海外資格」をどう生かすか

移民国家であるカナダでも、大きな問題があります。

海外で医師、看護師、技術者、職人などとして経験を積んだ人が、

資格を認められず、本来の能力より低い仕事に就く、

「brain waste(人的資本の浪費)」

です。

カナダ政府はForeign Credential Recognition Programを設け、

海外で取得した資格や技能を、

公平に、

一貫して、

透明性を持って、

迅速に評価できるよう、州政府、資格認証機関、業界団体などを支援しています。カナダ政府

これは日本にも重要な示唆があります。


12|日本でも「外国資格の見える化」が必要

例えば海外で、

看護。

介護。

電気工事。

自動車整備。

IT。

建設。

調理。

などの経験がある人が日本へ来ても、

その技能を十分評価できないことがあります。

結果として、

経験者なのに未経験者として働く

ことが起きます。

これは本人にとっても損失ですが、

人手不足の日本にとっても損失です。

外国人材を増やす前に、

すでに日本にいる外国人の能力を十分使えているか

を考える必要があります。


13|賛成側の主張

外国人材なしでは日本経済が回らない

外国人受け入れ拡大を支持する側には、強い現実的根拠があります。

日本の生産年齢人口は減少しています。

一方、

介護。

建設。

物流。

宿泊。

農業。

外食。

などは、人がいなければサービスそのものが成立しません。

外国人労働者はすでに257万人。

企業側の需要も拡大しています。厚生労働省

外国人受け入れを急激に止めれば、

事業縮小。

サービス価格上昇。

地方企業の廃業。

介護サービス不足。

などが起きる可能性があります。


14|慎重側の主張

人手不足を外国人で埋め続けてよいのか

一方で慎重論にも合理性があります。

人手不足は本来、

賃金上昇。

省力化。

自動化。

産業再編。

企業統合。

生産性向上。

を促すシグナルでもあります。

それを外国人労働力で埋め続ければ、

本来退出すべき低生産性企業が残る可能性があります。

さらに住宅、教育、医療、日本語教育などの社会コストも増えます。

したがって、

外国人を何人入れれば人手不足が解決するか

だけで政策を決めるべきではありません。


15|Japan Compass政策提案

「外国人材キャリアパスポート」

Japan Compassでは、

外国人材キャリアパスポート

の創設を提案します。

記録するのは、

職歴。

技能。

資格。

日本語能力。

研修履歴。

安全教育。

専門教育。

日本での就業経験。

などです。

ただし、企業が労働者を囲い込むための制度にはしません。

本人がデータを管理し、

転職しても技能評価を引き継げる仕組みにします。


16|海外資格を日本の技能評価につなげる

海外で取得した資格を、

「日本の資格ではないからゼロ」

と扱うのではなく、

日本の資格制度との対応関係を整理します。

完全に同等なら認定。

不足部分があれば追加研修。

安全基準が異なる場合は日本の試験。

という段階的な仕組みにします。

目的は規制を緩めることではありません。

必要な安全水準を守りながら、持っている能力を無駄にしないこと

です。


17|企業評価も公開する

外国人が職場を選ぶ際、

給与だけでは十分ではありません。

Japan Compassでは、外国人を一定人数以上雇用する企業について、

平均賃金。

賃金上昇率。

離職率。

社会保険加入。

残業。

日本語教育。

資格取得支援。

住居費。

相談体制。

重大な法令違反。

などを一定範囲で可視化することを提案します。

外国人から選ばれる企業は、

安い企業ではなく、育てる企業

になるようにします。


18|「外国人を雇う前に生産性改善」を確認する

人手不足業種だからといって、

無制限に外国人受け入れ枠を増やすべきではありません。

業界ごとに、

賃金は上がっているか。

設備投資をしているか。

DXを進めているか。

離職率を改善しているか。

女性や高齢者が働きやすくなっているか。

業務改革をしているか。

を確認します。

そのうえで、

それでも不足する人材を外国人で補う。

順番を変えるべきです。


19|地方には「定着インセンティブ」を

地方で外国人に働いてもらうために、

転職を制限するのではなく、

地方を選ぶメリット

を作ります。

例えば、

低家賃住宅。

家族向け住宅。

保育。

日本語教育。

資格取得補助。

地域交通。

子どもの教育支援。

地域ポイント。

一定期間居住した場合のキャリア支援。

などです。

企業だけでなく自治体も、

外国人から選ばれる地域

になる必要があります。


20|外国人労働者の受け入れ上限は必要か

これは今後、日本が正面から議論すべき問題です。

人口が減るから、

必要なだけ外国人を入れる。

という政策には限界があります。

住宅。

学校。

医療。

行政。

日本語教育。

地域コミュニティ。

には受け入れ能力があります。

したがって将来的には、

単純な全国人数だけではなく、

産業別・地域別の受け入れ能力

を評価する必要があります。

重要なのは、

「外国人が多すぎるか少なすぎるか」

ではなく、

社会インフラに対して受け入れ規模が適正か

です。


21|2035日本再設計ロードマップ

2026~2027年|外国人労働市場の可視化

産業別・地域別に、賃金、離職、技能、在留資格、外国人比率を把握します。

2027~2029年|育成就労制度を「キャリア制度」へ

育成就労から特定技能への移行だけでなく、技能・資格・日本語能力を継続的に記録します。

2029~2031年|外国人材キャリアパスポート導入

企業を移っても技能評価を引き継げる仕組みを全国展開します。

2031~2033年|海外資格認証制度を整備

主要職種について海外資格との対応基準を整備し、追加研修による資格取得ルートを作ります。

2033~2035年|外国人受け入れを産業政策へ統合

外国人受け入れ人数を、

人手不足だけではなく、

賃金。

生産性。

自動化。

地域インフラ。

教育。

住宅。

社会保障。

と合わせて決定する制度へ移行します。


22|2035日本再設計白書での位置付け

本稿は、

第一部 人口
第三部 経済・労働
第五部 教育・人材
第七部 地方創生
行政・制度改革

を横断するテーマとして位置付けます。

外国人受入れ特集は、

#018 受け入れルール
#019 犯罪・在留管理
#020 社会保障
#021 日本語・教育
#022 労働市場・賃金・キャリア

まで進みました。

これで、

「入国させる制度」から「日本で働き、暮らし、成長する制度」

までの基本構造が見えてきます。


今日の提言

日本が外国人材を必要としていることは、数字を見れば明らかです。

外国人労働者は257万人。

在留外国人は412万人を超えました。厚生労働省

だからこそ、

外国人を「安い労働力」として使う発想から離れるべきです。

安い外国人を増やせば、

日本人の賃金も上がりにくくなる。

外国人も豊かにならない。

企業も生産性を上げない。

社会保障の負担能力も上がらない。

結果として、日本全体が低賃金構造から抜け出せなくなる可能性があります。

必要なのは逆です。

外国人にも技能を身につけてもらう。

日本語を学んでもらう。

資格を取ってもらう。

より高度な仕事へ移ってもらう。

そして賃金を上げる。

日本人にも同じ仕組みを適用する。

外国人政策を正しく設計すれば、

日本人の賃金を下げる政策ではなく、日本全体の賃金と生産性を上げる政策にできるはずです。

2035年の日本が目指すべきなのは、

「外国人がいないと回らない低賃金社会」ではありません。

日本人も外国人も、技能を高めれば所得が上がる社会です。


読者への問い

人手不足の企業が、

賃金を上げる。

設備投資する。

業務を効率化する。

それでも人が足りない場合に外国人材を受け入れる。

この順番を原則にすることを、皆さんはどう考えるでしょうか。

そして外国人にも、

転職してより良い待遇を選ぶ権利を認める一方、地方企業からの人材流出を防ぐためには、どのような「地方を選ぶメリット」が必要でしょうか。


データ出典・参考資料

厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和7年10月末時点)

出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」

出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の公表等」

出入国在留管理庁「特定技能制度」

厚生労働省「令和7年版 労働経済の分析」

カナダ政府 Foreign Credential Recognition Program

※外国人労働者数は厚生労働省の「外国人雇用状況」届出に基づく2025年10月末時点、在留外国人数および在留資格別人数は出入国在留管理庁の2025年末時点の統計です。両統計は対象と定義が異なるため、同一の母集団として単純比較していません。

厚生労働省法務省カナダ政府

フィードバック

  1. […] Japan Compass#022 Earth Compass […]

  2. […] Japan Compass#022 八重山 Compass […]

コメントを残す

Japan Compassをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む