Pip: Japan Compassへようこそ。電気が止まれば、病院も通信も物流も全部止まる——そう言われると、エネルギーってただの電力政策じゃないですよね。
Mara: 今回はHazzy Wildが書いた2035年日本再設計シリーズの最新回、エネルギーを国家安全保障として設計し直すという大きなテーマを扱います。
Pip: 「原発か再エネか」という二択を外すところから始まるのが面白い。では早速、日本のエネルギーが抱える構造的な弱点から見ていきましょう。
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自給率15%という出発点
Mara: まずこの記事が立つ前提から確認します。記事はこう書いています。「2023年度のエネルギー自給率は15%程度です」——つまり8割以上を海外に頼っている。
Pip: 逆に言えば、海上封鎖や資源価格の急騰が起きた瞬間に、その8割が揺らぐということです。平時の効率が、有事の脆弱性に直結している。
Mara: その点で記事は安全保障との接続を強調しています。前回の#036で提示した「Seven Lifelines」——電力、通信、水、食料、医療、物流、行政・金融——のほぼすべてが電気に依存している、と。
Pip: ライフラインを守るためのライフラインが電力、というわけですね。構造として綺麗すぎて少し怖い。
Mara: さらに2035年に向けて電力需要は増える方向です。AI、データセンター、半導体工場、EVの普及——政府の第7次エネルギー基本計画も2040年度の発電電力量を1.1〜1.2兆kWh程度と想定しています。
Pip: 需要が増えるのに、供給の足元が不安定なまま——というのが問題の輪郭ですね。
Mara: だから記事は「原発か再エネか」という一択の議論を退けて、電源をポートフォリオとして設計する「Energy Portfolio Japan」という考え方を提案しています。投資と同じで、一つに集中すると、その技術や燃料に問題が起きた時に国家全体が影響を受ける、という論理です。
Pip: 分散こそがリスク管理、というのは金融の話と構造が同じですね。電力版の「卵を一つのバスケットに盛るな」。
Mara: 各電源を発電コストだけで比較するのもやめようと言っています。原子力なら廃炉・廃棄物・事故リスク対策まで、再エネなら送電・蓄電・系統増強まで、火力なら燃料価格・為替・CO2まで含めた「Full Cost Energy」で評価する、と。
Pip: そしてもう一つ、発電量の数字だけ追う議論への批判もありますね。
Mara: はい。太陽光をいくら増やしても、送電線がなければ電気は運べない。北海道の風力も九州の太陽光も、需要の大きい東京や大阪へ届かなければ使えない。記事はこれを「地方に工場を作ったのに高速道路がない状態」と表現し、「National Energy Highway」として地域間連系線や海底ケーブルの強化を提案しています。
Pip: ただ、全国を一本につなぐだけでは別のリスクが生まれる。
Mara: その通りで、記事は集中と分散を同時に進める方針を示しています。地域の太陽光・蓄電池・EVをつなぎ、通常時は全国網につながりながら、災害時には切り離して地域だけで動ける「Community Microgrid」の整備です。アメリカのエネルギー省が進めるCommunity Microgrid Assistance Partnershipも参照されています。
Mara: 特に離島・山間部・災害多発地域との相性が良いとして、八重山諸島を「Yaeyama Energy Sandbox」——日本版の島嶼エネルギー実証地域——にする提案も出ています。目標は再エネ100%ではなく、台風や海上物流停止が起きても重要施設を止めない島、です。
Pip: 重要施設については「Critical Power 72」という提案もありますね。
Mara: 病院、消防、通信基地局、避難所などについて、外部電源が止まっても最低72時間、可能なら7日間機能できる電力を確保する。そして非常用発電機を置くだけでなく、本当に72時間動くのか、燃料はあるのか、定期的に実負荷で検証する、と。
Pip: EVもその文脈で登場します。移動できる非常用電源として。
Mara: 「National V2X Network」として、Vehicle to Home、Vehicle to Building、Vehicle to Gridを全国標準化し、災害時には自治体や物流会社のEVを地域電源として活用できる仕組みを作る、という提案です。
Pip: 地域の負担と利益の非対称性にも触れていますね。発電所が建つのは地方、利益は地域外へ、という問題。
Mara: EUの「Energy Community」制度を参照しながら、「Local Energy Dividend」として地域エネルギー事業の利益を地域基金や電気料金割引に還元する仕組みを提案しています。「発電所がある地域が得をする」構造にする、と。
Pip: コストの透明性についても「Energy Cost Dashboard」で公開する、という提案まで含めると、かなり広角なロードマップですね。
Mara: 記事の結論はシンプルです。「一か所が止まっても、日本全体は止まらない」エネルギーシステム——それが2035年の目標だと。安全保障、産業政策、地方創生、住宅設計、すべてがエネルギーを通じて接続されている、という整理です。
Pip: 「原発か再エネか」を卒業して、次の問いへ——というのが今回の核心ですね。では締めくくりへ。
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Mara: 電力をインフラとしてではなく、社会の設計図として捉え直す——それがこの回の問いかけでした。
Pip: 次回はまた別の領域で日本の再設計が進みます。引き続きJapan Compassでお会いしましょう。

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