Podcast Episode: Japan Compass#033

Pip: Japan Compassへようこそ。「人を増やせば解決する」という発想が、そろそろ限界を迎えています。

Mara: 今回はHazzy Wildが手がける2035日本再設計プロジェクトの最新回を取り上げます。テーマは「働き方の再設計」——人口減少とAI時代に、日本の労働市場をどう作り直すかという問いです。

Pip: 採用でも定年延長でもない、第三の道があるという話ですね。

Mara: そうです。雇用の「量」から「質と流動性」へ、という転換提案です。では、その核心から見ていきましょう。

「仕事がない」から「人が足りない」へ——日本の労働構造の転換

Pip: まずこのポストが問い直しているのは、日本の労働問題の診断そのものです。失業対策ではなく、人材配置の失敗——これが出発点になっています。

Mara: データを先に示しておくと、2026年7月の完全失業率は2.4%、就業者は6,850万人。その数字を踏まえてこう書かれています。「問題は、人がいない。だけではありません。ある業界には人が足りない。別の業界では仕事がAIやデジタル化によって減る。一方で、そこから人が移動しにくい。つまり、人材の再配置機能が弱い。これが日本の大きな構造問題です。」

Pip: 失業率が低いのに現場は人手不足、というのは数字の見かけ倒しではなく、構造の問題だということですね。

Mara: そうです。そしてOECDのデータも重ねられています。生産年齢人口は1995年から2024年にかけて約16%減少し、高齢者扶養率は21%から49%へ上昇しています。人が動けない社会のまま人口が減れば、不足は加速するだけです。

Pip: だからといって「解雇しやすくすればよい」という単純解には反論もあります。住宅ローンや教育費を抱えたまま雇用だけ流動化すれば、流動化ではなく不安定化になる、と。

Mara: 代わりに提案されているのが「Employment SecurityからCareer Securityへ」という転換です。会社に残れる安心ではなく、会社を離れても学び直し、収入をつなぎ、再就職できる安心を制度として整える方向です。

Pip: 安心の定義を変える、という話ですね。

Mara: 具体的な政策構想として、いくつかの柱が示されています。学び直しの費用を個人に紐づける「Lifetime Skills Account」、AI導入と人材再投資をセットにする「Task Redesign」、職業訓練の成功指標を受講者数ではなく6か月後の就職率・1年後の所得・3年後の定着率で測る仕組みへの転換——これらが並びます。

Mara: シンガポールのSkillsFutureも参照されています。教育費だけでなく、学んでいる間の生活費に目を向けている点が日本に欠けている、と。日本版の「Reskilling Allowance」構想はそこから来ています。

Pip: OECDの分析では、AI関連の企業研修への参加率が50歳以上では25%にとどまっています。2035年まで働き続けるのはまさにその世代なのに、学び直しにもっとも参加しにくい——という皮肉な構図です。

Mara: さらに採用の仕組み自体も問い直されています。「大卒以上」という要件ではなく、必要な技能・経験・資格を示す「Skills-Based Hiring」を公共部門から導入し、学歴ではなく「Skills Passport」で人材を評価する方向が提案されています。

Pip: 「どこの会社にいたか」より「何ができるか」へ。採用の軸を変えれば、中途・高齢者・地方・子育て後の復職・外国人の機会も広がるということですね。

Mara: 外国人政策についても「人口補充」ではなく「人材政策」として設計する必要があると指摘されています。どの技能が、どの地域で、何年間必要か。家族帯同や日本語教育、永住への道まで含めて設計しなければ定着しない、と。

Pip: そして地方の話になると、小規模な自治体や企業では専門職を一社ずつ雇えないという現実があります。

Mara: そこで提案されているのが「Regional Talent Utility」——IT、会計、人事、法務、広報などを地域全体で共有する仕組みです。教育編の「Regional Education Utility」、介護編の「Regional Care Utility」と同じ発想の延長線上にあります。

Pip: 個別最適から地域最適へ。これは働き方の話であると同時に、地方創生の話でもあります。

Mara: 最後に示されているのは「Zero Waste Work」という概念です。AI導入より先に、重複入力・紙手続き・不要な会議・承認階層を削る。生産性向上とは人を急がせることではなく、同じ1時間からより大きな価値を生むことだ、という整理です。

Pip: 働き方の再設計は、採用政策だけでなく、仕事そのものの設計から始まる——という話が、次のテーマにもつながってきます。


Mara: 「終身雇用の復活でも、いつでも解雇できる社会でもない」——安心して移動できる社会、という目標は、教育・介護・雇用の三つが一体で機能して初めて成り立ちますね。

Pip: 次回はその三つのうちのどこかが、さらに深く掘り下げられるはずです。続きが楽しみです。

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