Pip: Japan Compassへようこそ。今日のテーマは、日本の研究者が研究以外のことに追われているという、ちょっとシュールな現実です。
Mara: Hazzy Wildが書いたJapan Compass#046は、日本の研究力低下を「研究費不足」という単純な診断から切り離し、研究者の時間そのものを問い直す一本です。研究費、支援人材、大学運営を「研究時間」という軸でつなぎ直します。
Pip: では、その時間の話から始めましょう。
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研究者の時間はどこへ消えたのか
Mara: この記事が問うのは、研究費を増やすだけで日本の研究力は本当に戻るのか、という問いです。その入口になる数字が、文部科学省のFTE調査に記録されています。
Pip: 記事はその数字をこう示しています。「研究時間 71.7%が最も高く、研究資金 45.9%、研究人材 45.8%、研究環境 36.1%を上回っています」——これは研究パフォーマンスへの制約として「非常に強い」「強い」と答えた研究者の割合です。
Mara: つまり、お金より時間の方が先に詰まっているということです。実際、大学教員が研究に使える時間の割合は2002年度の46.5%から2022年度には32.2%まで下がっています。研究者が怠けているのではなく、教育、会議、研究費申請、報告書、設備管理といった業務が積み上がった結果です。
Pip: 研究費を増やしても、研究者本人が契約書や報告書を書き続けるなら、研究時間は増えません。構造の問題です。
Mara: そこで第7期科学技術・イノベーション基本計画が踏み込んだのが、研究時間そのものをKPIにするという方向転換です。第1・第2グループ等の研究大学について、2030年度に研究時間割合50%という目標が設定されました。現状値は32.2%です。
Pip: 従来は「いくら投入したか」「何件採択したか」が中心でした。そこに「研究者の時間」という指標が入ってきたのは、確かに大きな変化です。
Mara: 2026年7月に採択が決まったEPOCH、先端研究基盤刷新事業も、設備を買い替えるだけの事業ではありません。技術職員、URA、設備の共用体制を含む研究環境全体を対象としており、47件の提案から19件が選定され、180機関以上が参加します。事業期間は10年間です。
Pip: 研究者が機器の保守や予約管理まで自分でやらなくて済めば、その分が研究に戻ります。
Mara: 記事はさらに、競争的資金と基盤的経費の役割分担にも踏み込みます。競争を強めるほど、研究費を取るための申請・報告業務が増える可能性があります。英国のDual Supportのように、研究室を維持するための基盤資金と、競争で選ぶ資金を組み合わせる設計が参考になると指摘しています。
Mara: EUのERCコンソリデーター・グラントが最長5年間の支援を設計しているのも、失敗できる時間を研究者に与えるためです。ドイツのExcellence Strategyは7年間、43大学70クラスターへの長期集中投資ですが、記事は同時に、選ばれなかった地方大学の研究基盤が細ることへの警戒も忘れていません。
Pip: 研究時間を50%にするために教育を削れば、それはそれで問題です。記事はその点も正直に書いていて、総労働時間が増えるだけの歪んだ達成を警戒しています。
Mara: だから記事が提案するのは、研究者の仕事を減らすことではなく、「研究者でなければできない仕事へ時間を戻すこと」です。研究者は研究する、技術職員は設備を支える、URAは研究活動を支援する——それぞれの専門性を機能させる仕組みが、研究費を本当の研究成果へ変える、というのが記事の結論です。
Pip: 次は、その仕組みを実際に検証できるかどうか、という問いに移りましょう。
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Pip: 研究費でも論文順位でもなく、「今日、何時間研究できたか」を問う記事でした。
Mara: 時間という指標が政策の中心に入ってきたこと自体が、次の問いを生みます。次回もお楽しみに。

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