Japan Compass #087

膨らんだ充電池の処分方法を解説します。地域の安全と資源循環を考え、正しい回収ルールを確認しましょう。

膨らんだ充電池は、どこへ持っていけばよいのか

――2025年度の発煙・発火等は39,282件。回収自治体86.2%の先にある「危険な電池」の問題

2026年10月28日|2035日本再設計プロジェクト|資源循環・自治体行政・製品安全編

自宅の引き出しを整理していたら、古いモバイルバッテリーが出てきました。

数年前に購入したものです。

最近は使っていません。

新しい製品へ買い替えたため、その存在を忘れていました。

ところが、よく見ると本体が少し膨らんでいます。

ケースの一部が変形しているようにも見えます。

もう使わないので処分しようと思いました。

しかし、そこで手が止まります。

燃えるごみに出してよいのでしょうか。

燃えないごみでしょうか。

電池なので、家電量販店に持っていけばよいのでしょうか。

調べてみると、近くの店舗には使用済み充電池の回収ボックスがあります。

ところが、回収条件には、破損や膨張した電池は対象外と書かれています。

では、自治体に出せるのでしょうか。

自治体のホームページには、通常の充電池についての説明はあります。

しかし、膨らんだ電池については、何をすればよいのか分かりません。

こうした状況になったら、あなたはどうするでしょうか。

危険そうだから、しばらく自宅で保管するかもしれません。

あるいは、処分方法が分からず、ほかのごみと一緒に出してしまう人がいるかもしれません。

しかし、リチウムイオン電池は、強い衝撃や圧力が加わると、発熱や発火につながるおそれがあります。

ごみ収集車や処理施設では、回収したごみを圧縮したり、破砕したりする工程があります。

その中に充電池が混入していれば、火災につながる危険があります。

つまり、使い終わった電池の処分は、個人の片付けの問題だけではありません。

地域のごみ収集と、廃棄物処理施設の安全にも関わる問題なのです。

日本では、使用済みの小型充電式電池を回収する制度が既に存在しています。

自治体による回収があります。

メーカーなどによる自主回収もあります。

一般社団法人JBRCによる回収協力店の仕組みもあります。

決して、何も整備されていないわけではありません。

しかし、ここで重要な問題があります。

正常な状態の電池を回収できることと、破損・膨張した電池を安全に回収できることは、同じではないのです。

2026年9月29日、環境省は全国の市町村を対象とした、リチウムイオン電池等の処理状況調査を公表しました。

その数字から、現在の日本が抱える課題が見えてきます。

今日のJapan Compassでは、使用済み充電池の回収制度を確認しながら、2035年に向けて、地域の安全と資源循環をどのように両立させるかを考えます。


Executive Summary

結論から言います。

Japan Compassは、リチウムイオン電池の回収について、全国の自治体で回収制度を整えることに加え、破損・膨張した製品やメーカー不明品についても、安全な引渡し先を確保する必要があると考えます。

ただし、すべての自治体が、あらゆる種類の電池を同じ方法で収集することを提案するものではありません。

電池には、種類や大きさの違いがあります。

状態にも違いがあります。

通常の電池と、膨張・変形した電池では、保管や運搬に必要な安全対策も異なります。

また、家庭から排出されるものと、企業などの事業活動から排出されるものでは、廃棄物処理の責任関係も異なります。

そのため、全国一律の収集方法を定めることが、必ずしも合理的とは限りません。

一方、住民が処分しようとしたときに、安全な引渡し先を見つけられない状態は、減らしていく必要があります。

環境省が2026年9月29日に公表した調査の概要を確認します。

指標公表結果
調査対象市町村等1,741
回答数1,741
調査回答率100%
リチウムイオン電池等に起因すると疑われる火災事故等39,282件
うち職員または消防隊による消火が行われたもの9,456件
電池または電池使用製品を回収している市町村86.2%
前年度からの増加8.9ポイント
膨張・変形した電池等を回収している市町村41.3%

対象年度は2025年度、すなわち2025年4月から2026年3月までです。

調査は2026年4月28日から5月28日に実施されました。

ここで注意が必要です。

39,282件は、リチウムイオン電池等に起因すると疑われる発煙・発火を含んだ火災事故等の件数です。

すべてが大規模な火災だったわけではありません。

また、原因がすべて確定した火災件数でもありません。

一方、9,456件は、職員または消防隊による消火が行われた火災事故等です。

この二つを混同してはいけません。

さらに、回収している自治体が86.2%という数字も、すべての種類・状態の電池を回収できることを意味しません。

少なくとも、電池または電池使用製品の回収に対応している自治体の割合です。

そして、膨張・変形した電池等については、回収している自治体が41.3%という結果になっています。

制度の入口は広がっている一方で、特別な取扱いが必要な電池には、なお課題が残っている。

今回の統計からは、そのことが読み取れます。

Japan Compassは、次の四つを提案します。

第一に、通常の電池と、破損・膨張した電池について、回収先の案内を明確に分けること。

第二に、自治体単独で安全な回収体制を整えることが難しい場合には、広域連携や既存の回収事業者との協力によって、引渡し先を確保すること。

第三に、回収を実施している自治体の割合だけでなく、住民が実際に処分できるかを検証すること。

第四に、製品の製造・販売から回収・再資源化までの費用と責任を整理することです。

目指すのは、単に回収箱を増やすことではありません。

使い終わった電池を、危険な状態になる前にも、危険な状態になった後にも、安全に社会から回収できること。

それを、2035年の日本に向けた目標にしたいと思います。


1|2025年度、廃棄物処理の現場で何が起きていたのか

まず、環境省の調査結果を詳しく考えます。

2025年度に報告された、リチウムイオン電池等に起因すると疑われる火災事故等は39,282件でした。

これは、火災だけでなく、発煙や発火などを含む数字です。

また、自治体等から報告された事故であり、すべての事故について原因が確定しているという意味ではありません。

そのうち、職員または消防隊による消火が行われたものは9,456件でした。

ここで考えたいのは、事故が発生する場所です。

家庭にある充電池は、使用している間だけ危険があるわけではありません。

処分する際にも、適切な取扱いが必要です。

例えば、モバイルバッテリーが、ほかの不燃ごみに混入していたとします。

ごみ収集車に積み込まれました。

その後、ごみを圧縮する工程で強い力が加わりました。

あるいは、処理施設で破砕されたかもしれません。

その際、電池内部が損傷すれば、発熱や発火につながる可能性があります。

もちろん、廃棄物処理の現場で発生するすべての火災が、リチウムイオン電池によるものではありません。

また、リチウムイオン電池が混入しても、必ず火災が発生するわけではありません。

しかし、発火の危険性があるものを、通常のごみと同じ方法で処理することにはリスクがあります。

この問題は、ごみ処理施設の職員だけの問題ではありません。

例えば、処理施設の設備が火災によって損傷した場合です。

修理が必要になるかもしれません。

施設の稼働を一時的に停止しなければならない場合もあるでしょう。

その場合、ごみの収集や処理を別の施設で行う必要が生じる可能性があります。

もちろん、すべての発煙事故が施設停止につながるわけではありません。

しかし、一度大きな事故が発生すれば、地域の廃棄物処理に影響する可能性があります。

つまり、充電池の分別回収は、単なるリサイクル政策ではありません。

地域のごみ処理を、安全に継続するための政策でもあるのです。


2|回収自治体86.2%という数字を、どう評価するべきか

次に、回収体制について考えます。

環境省の調査では、リチウムイオン電池、またはリチウムイオン電池使用製品を回収している市町村は86.2%でした。

前年度から8.9ポイント増加しています。

これは、回収体制の整備が進んでいることを示す数字です。

私は、この前進を評価したいと思います。

ただし、ここには重要な問題があります。

例えば、ある自治体が、通常の小型充電式電池を回収しているとします。

しかし、製品に内蔵されていて取り外せない電池は、回収対象ではないかもしれません。

あるいは、メーカーが分からない電池については、相談が必要になる場合もあるでしょう。

さらに、膨張した電池は、通常の回収対象から除外されている可能性があります。

このような自治体でも、通常の充電池を回収していれば、回収実施自治体として集計される場合があります。

したがって、86.2%という数字を、そのまま「全国の86.2%の地域では、あらゆる電池を処分できる」と理解することはできません。

また、回収していることと、住民が利用しやすいことも違います。

例えば、回収場所が自治体の施設に一か所しかない場合です。

車を持っていない住民にとっては、持ち込むことが難しいかもしれません。

反対に、日常的に利用する場所で回収していれば、比較的持ち込みやすいでしょう。

さらに、回収日が限られている場合には、家庭で保管する期間が長くなる可能性があります。

しかし、だからといって、危険な電池をいつでも無人の回収箱へ投入できるようにすることが適切とは限りません。

膨張や破損がある電池は、通常の電池とは異なる管理が必要になる場合があるからです。

ここでは、二つの条件を考える必要があります。

住民が利用できること。

そして、安全に回収できること。

利便性と安全性を両立させることが、これからの回収制度には求められます。


3|本当の課題は、膨張・変形した電池への対応ではないか

今回の調査で、私は特に注目したい数字があります。

41.3%です。

これは、膨張・変形したリチウムイオン電池、または電池使用製品を回収している市町村の割合です。

通常の電池等を回収している自治体の割合86.2%と比べると、大きな違いがあります。

もちろん、この二つは回収対象の条件が異なる指標です。

また、自治体で回収していないからといって、その地域に民間の回収経路がまったく存在しないと断定することもできません。

しかし、少なくとも自治体の回収体制において、膨張・変形した電池への対応が十分に広がっていないことは確認できます。

では、なぜでしょうか。

例えば、通常の小型充電式電池であれば、状態が良好なことを確認し、定められた回収方法で集めることができます。

しかし、膨張した電池は違います。

内部に異常が生じている可能性があります。

取り扱う際に、強い力を加えることは危険です。

保管場所にも注意が必要です。

ほかの電池と一緒に管理することが適切ではない場合もあります。

また、運搬や処分を引き受ける事業者についても、安全に対応できる体制が必要です。

単に回収箱を設置すればよいわけではありません。

回収した後、誰が運ぶのか。

どこで保管するのか。

誰が最終的に処理するのか。

そこまで決める必要があります。

だからこそ、膨張した電池への対応は、通常品の回収よりも難しい場合があるのです。

しかし、ここで私は一つ疑問があります。

危険性が高い可能性のある電池ほど、住民が処分先を見つけにくい状態になっていないでしょうか。

もしそうであれば、制度の改善が必要です。

もちろん、危険な電池を通常の回収箱へ入れられるようにすればよいという意味ではありません。

必要なのは、安全な引渡し方法を確保することです。

そして、その方法を住民が理解できることです。


4|メーカーの自主回収だけでは、対応しきれない場合がある

日本には、小型充電式電池の自主回収制度が存在しています。

その中心的な役割を担っている団体の一つが、一般社団法人JBRCです。

JBRCでは、会員企業が製造・販売した対象の小型充電式電池について、全国の回収協力店や協力自治体を通じて回収を行っています。

利用者は、公式サイトで協力店や協力自治体を検索できます。

しかし、ここでも重要な点があります。

JBRCが回収する電池には条件があります。

例えば、会員企業の製品であることです。

メーカーが不明なものや、会員企業以外の製品は、原則として回収対象外です。

また、電池の種類が明確であることも必要です。

さらに、破損や水濡れ、膨張などの異常がある電池も、回収対象外とされています。

つまり、JBRCの回収制度は、すべての使用済み電池を無条件に受け入れる仕組みではありません。

これは、制度に欠陥があるという意味ではありません。

自主回収制度には、対象製品と安全上の条件があるからです。

しかし、住民の立場から考えると、別の問題が生じます。

例えば、メーカー不明のモバイルバッテリーです。

または、長年使用して膨らんだ充電池です。

こうした電池について、JBRCの協力店で回収できない場合があります。

では、どこへ持っていけばよいのでしょうか。

この部分で、自治体の役割が重要になります。

なお、リサイクルマークが付いているかどうかだけで、JBRCの回収対象を判定できるわけではありません。会員企業の製品であることや、電池の状態なども確認する必要があります。

私は、ここでメーカーの自主回収制度と自治体の回収制度を対立させるべきではないと思います。

むしろ、互いの役割を明確にする必要があります。

正常な状態の回収対象電池については、既存の自主回収を活用する。

一方、自主回収の対象外となる電池については、自治体や適切な処理事業者への引渡し方法を案内する。

そのような仕組みを整えることが重要ではないでしょうか。


5|2025年4月、国は市町村へ回収体制の整備を求めた

ここで、政府の政策を確認します。

2025年4月15日、環境省は「市町村におけるリチウム蓄電池等の適正処理に関する方針と対策について」という通知を発出しました。

その背景には、廃棄物処理施設やごみ収集車で、リチウムイオン電池等に起因する火災事故が発生していることがあります。

環境省は、市町村による分別回収や適正処理を進める方針を示しました。

対象となるのは、通常の電池だけではありません。

リチウムイオン電池が内蔵された製品も含まれます。

また、膨張・変形した電池や、メーカーなどによる自主回収の対象外となるものについても、適切な取扱いを求めています。

ただし、ここで注意したいことがあります。

2025年4月の通知によって、すべての自治体へ、同一の方法による回収が法律上一律に義務付けられたわけではありません。

自治体には、地域の状況に応じた収集方法や処理体制があります。

例えば、人口が多い都市部です。

定期的な収集や回収拠点の設置が合理的な場合があります。

一方、人口が少ない地域では、同じ方法が適切とは限りません。

離島や山間地域では、収集した電池を処理事業者へ運ぶこと自体が課題になる場合もあるでしょう。

そのため、国の方針を現場へ実装する際には、地域の条件を考える必要があります。

しかし、地域差があるからといって、安全な引渡し先がなくてもよいとは思いません。

私は、ここを区別するべきだと考えます。

収集方法には地域差があってよい。

しかし、処分方法が分からないまま危険な電池を家庭へ残し続ける状況は、できるだけ減らす必要があります。

方法は地域に応じて異なっても、住民が安全な引渡し先へ到達できること。

そこを政策の目標にするべきではないでしょうか。


6|2025年12月、政府は2030年までの目標を設定した

さらに、政府の取組は進んでいます。

2025年12月23日、環境省は「リチウムイオン電池総合対策パッケージ」を公表しました。

このパッケージは、関係省庁が連携して、製品の使用時と廃棄時の火災防止、回収・再資源化の促進を図るものです。

政府は、2030年までにリチウムイオン電池に起因する重大火災事故をゼロにすることを目指しています。

また、国内に十分なリサイクル体制を構築することも目標に掲げています。

これは、重要な政府方針です。

ただし、2030年に重大火災事故ゼロを目指すということは、すでに事故がなくなったという意味ではありません。

将来の政策目標です。

また、重大火災事故ゼロという目標と、今回の調査にある発煙・発火を含む39,282件という指標は、同じ定義ではありません。

そのため、39,282件を2030年に単純にゼロへ減らす目標だと理解することも適切ではありません。

政府は、製品の購入から使用、廃棄までについて、「3つのC」という呼びかけも行っています。

安全性を考えて製品を選ぶこと。

適切に使用すること。

そして、正しく廃棄し、資源循環につなげることです。

これらは、既に政府が進めている啓発活動です。

Japan Compassが新しく考えた名称や構想ではありません。

私は、この方向性には合理性があると思います。

なぜなら、充電池の事故は、廃棄時だけに発生するわけではないからです。

例えば、製品の使用中に発火する場合もあります。

高温の場所で保管したことが関係する事故もあります。

強い衝撃によって損傷する場合もあります。

また、製品自体に問題があり、リコールの対象となることもあります。

つまり、廃棄物処理の現場だけで対策を行っても、すべての事故を防ぐことはできません。

製造・販売・使用・廃棄の各段階で対策する必要があります。

政府も、この考え方を総合対策パッケージに取り入れています。

今回のJapan Compassで検証したいのは、そのうちの使用済み製品が家庭から適切な回収経路へ移る部分です。


7|電池そのものの事故と、ごみ処理現場の事故は区別する

ここで、統計についてもう一つ注意したいことがあります。

リチウムイオン電池に関する事故は、複数の公的機関が集計しています。

例えば、独立行政法人製品評価技術基盤機構、NITEです。

NITEが2026年7月15日に公表した資料によると、2021年から2025年までの5年間に通知されたリチウムイオン電池搭載製品の事故は2,140件でした。

製品別では、モバイルバッテリーの事故が最も多くなっています。

また、事故は春から夏にかけて増加する傾向があり、8月にピークを迎えるとされています。

しかし、この2,140件と、環境省の39,282件を単純に合計することはできません。

理由は、集計対象が異なるからです。

NITEの数字は、製品事故情報として収集されたものです。

重大製品事故だけでなく、非重大製品事故なども含まれています。

一方、環境省の39,282件は、市町村等から報告された廃棄物処理に関する火災事故等の状況です。

調査期間も異なります。

NITEは2021年から2025年までの5年間。

環境省の今回の数字は2025年度です。

したがって、両者を足して、日本全体の充電池事故件数を算定することは適切ではありません。

また、NITEが収集した事故には、原因を調査中のものや、電池に起因した可能性があると推定されるものも含まれます。

この点も重要です。

私は、今後の政策評価では、事故の発生場所と原因を分けて考える必要があると思います。

製品を使用しているときの事故。

充電しているときの事故。

家庭で保管しているときの事故。

ごみ収集車で発生した事故。

廃棄物処理施設で発生した事故。

それぞれ、必要な対策は異なります。

安全な製品を選ぶことが重要な場合があります。

使い方を改善する必要がある場合もあります。

分別回収を改善することが重要な場合もあります。

事故の数字を一つにまとめるだけでなく、どの段階で何が起きているのかを確認すること。

それが、実効性のある対策につながると思います。


8|自治体の実例:川崎市は、膨張した電池の出し方も案内している

では、自治体ではどのような取組が行われているのでしょうか。

参考になるのが、川崎市です。

川崎市は、2025年11月から、家庭で使用した充電式電池や、それらが内蔵された小型家電製品を「小物金属」として収集する仕組みを開始しました。

通常の収集日は月2回です。

モバイルバッテリーなどの充電式電池も対象となります。

また、電池を本体から取り外せない製品については、無理に取り外さずに出すよう案内しています。

ここが重要です。

電池を取り外そうとして、製品を破損させれば、発煙や発火につながる可能性があるからです。

さらに、川崎市では、膨張・変形した充電式電池についても、通常の電池と区別した出し方を案内しています。

例えば、ほかの電池と分け、状態が分かるようにして排出する方法です。

また、回収協力店で受け付けられない電池について、生活環境事業所へ持ち込む方法も案内されています。

これらは、川崎市が定めている具体的な方法です。

全国すべての自治体で、同じ方法を使ってよいという意味ではありません。

住民が実際に処分する際には、自分が住んでいる自治体のルールを確認する必要があります。

また、川崎市の制度にも対象外となる製品があります。

例えば、ポータブル電源や一部の大型製品などは、一般の小物金属収集の対象ではありません。

こうした製品については、メーカーや販売店への相談など、別の方法が案内されています。

私は、この事例から参考にしたいことがあります。

それは、電池の種類だけでなく、状態によって出し方を分けて説明していることです。

正常な充電池。

電池が取り外せない製品。

膨張・変形した電池。

通常の回収協力店では受け付けられないもの。

これらを区別することで、住民が判断しやすくなります。

もちろん、川崎市の方法が、すべての地域にとって最適だと断定することはできません。

人口密度や収集体制、処理事業者との関係が異なるからです。

しかし、状態の異なる電池について、具体的な引渡し先を示すことには、大きな意味があると思います。


9|なぜ、全国で同じ回収体制を整えるのは難しいのか

ここで、自治体側の事情を考えます。

例えば、人口の多い都市部です。

家庭から大量の使用済み電池が排出されます。

回収拠点を設けたり、定期的に収集したりすることが合理的かもしれません。

一方、人口の少ない山間地域ではどうでしょうか。

回収される電池の量が少ない場合もあるでしょう。

しかし、量が少なくても、安全な保管場所や適切な運搬方法は必要です。

さらに、離島の場合です。

地域内に適切な再資源化施設がない可能性があります。

その場合、船舶などを使って島外へ運ぶ必要が生じるでしょう。

ただし、電池の状態や運搬方法によって、安全上の条件や規制が関係する場合があります。

また、運搬費用も必要です。

少量の電池を輸送する場合には、一個当たりの費用が高くなる可能性もあります。

では、その費用は誰が負担するのでしょうか。

自治体でしょうか。

メーカーでしょうか。

販売店でしょうか。

それとも、処分する住民でしょうか。

この問題は、回収制度を継続する上で避けられません。

もちろん、すべての自治体へ同じ費用負担を求めることは、合理的ではないかもしれません。

地域によって、回収量や運搬距離、必要な安全設備が異なるからです。

また、回収後の処理にも専門的な事業者が必要です。

膨張した電池を安全に保管し、適切な方法で運搬できなければ、回収場所だけを増やしても問題は解決しません。

私は、ここに自治体単独での対応の難しさがあると思います。

そのため、必要に応じて複数自治体が協力することや、既存の回収・処理事業者と連携することが重要になるでしょう。

ただし、広域化すれば必ず費用が安くなるとも限りません。

運搬距離が長くなれば、別の費用が増えるからです。

どこで集め、どこで保管し、誰が運び、どこで処理するのか。

その全体を考える必要があります。


10|海外事例:EUは電池の回収目標と製造者責任を制度化している

海外の制度も参考になります。

欧州連合、EUでは、2023年に新しい電池規則が採択されました。

この規則では、電池の製造から使用、回収、再資源化までを、一つの流れとして扱っています。

特徴の一つが、使用済み電池の回収目標です。

携帯型の使用済み電池について、製造者側に次の目標が設定されています。

2027年末までに63%。

2030年末までに73%。

また、電動自転車などの軽量輸送手段に使われる電池については、別の回収目標が設けられています。

2028年末までに51%。

2031年末までに61%です。

さらに、使用済み電池からのリチウム回収についても、目標が設定されています。

2027年末までに50%。

2031年末までに80%です。

ただし、これらは将来の目標です。

2026年10月現在、すべての目標が達成されたという意味ではありません。

また、ここで日本の数字と混同してはいけないことがあります。

日本の86.2%は、回収を実施している市町村の割合です。

一方、EUの63%や73%は、使用済み携帯型電池の回収に関する目標です。

分母が違うため、数字を直接比較することはできません。

日本の86.2%がEUの63%より優れている、という説明は適切ではないのです。

それでも、EUの制度には参考になる点があります。

電池を単に販売するだけでなく、使い終わった後の回収・再資源化まで含めて考えていることです。

また、拡大生産者責任という考え方も重要です。

これは、製品を製造・販売する側が、使用後の回収や処理についても一定の責任を負うという考え方です。

ただし、日本にも既にメーカー等による自主回収制度や、資源有効利用促進法に基づく仕組みがあります。

したがって、製造者責任という考え方が日本に存在しないわけではありません。

今回考えたいのは、その先です。

例えば、メーカー不明品です。

あるいは、膨張・破損して通常の自主回収対象から外れた製品です。

そうした電池について、誰が安全な回収を担うのか。

費用をどう分担するのか。

ここを明確にする必要があります。

私は、EUの制度をそのまま導入することよりも、製品の販売から廃棄までを連続した責任として考えることを参考にしたいと思います。


賛否|全国で回収を義務化すれば、問題は解決するのか

ここで、二つの考え方があります。

一つは、すべての自治体で回収体制を整えるべきだという意見です。

私は、この考え方には合理性があると思います。

どの地域に住んでいても、安全な引渡し先を見つけられることには意味があります。

特に、膨張・変形した電池について、住民が処分先を見つけられない状態は、できるだけ減らすべきでしょう。

また、適切な回収によって、通常のごみへの混入を減らせる可能性があります。

その結果、収集車や処理施設での火災事故を減らせるかもしれません。

ただし、これには慎重な意見もあります。

例えば、全国のすべての自治体に、同じ専用回収施設を整備することを求めた場合です。

設備投資が必要になります。

専門職員も必要です。

収集車両や保管設備も必要になるでしょう。

しかし、回収する電池の量が少ない地域では、施設の維持費が大きな負担になる可能性があります。

また、膨張した電池を通常の回収箱で受け付けることは、安全上適切ではない場合があります。

だからこそ、私は「全国で回収できるようにすること」と「全国で同じ方法を使うこと」を分けて考えるべきだと思います。

例えば、都市部では定期的な収集が合理的かもしれません。

一方、離島や山間地域では、専門の窓口で受け付け、一定量をまとめて適切な方法で運搬する方が合理的な場合もあるでしょう。

もちろん、具体的な方法については、安全上の基準と、実際の費用を確認する必要があります。

また、住民側の利便性も重要です。

あまりにも回収場所が遠ければ、利用しにくくなります。

しかし、危険な電池を無人の回収箱へ自由に投入できるようにすればよいとも限りません。

ここには、安全性と利便性の調整が必要です。

すべての自治体へ同じ設備を求めるのではなく、すべての住民が安全な引渡し先へ到達できることを目指す。

私は、この方向が合理的だと思います。


Japan Compass政策提案

「回収している自治体の割合」から「処分先に困らない地域」へ

今回の提案では、新しい全国的な電池回収組織を一から設立することを前提にしません。

既に自治体の回収制度があります。

メーカー等の自主回収制度もあります。

JBRCの回収協力店もあります。

さらに、2025年4月には国の通知が発出され、2025年12月には総合対策パッケージが策定されています。

そのため、Japan Compassが提案したいのは、既存の回収制度をつなぎ、危険な電池も安全な引渡し先へ到達できるようにすることです。

提案①|電池の状態別に、処分方法を明確にする

第一に、住民向けの案内です。

現在、自治体やメーカーによって、回収する電池の対象や方法が異なります。

そのため、住民が判断しやすい説明が必要です。

例えば、次のような区分です。

正常な状態の小型充電式電池。

破損・膨張した電池。

電池を取り外せない製品。

メーカー不明品。

事業活動で使用した電池。

これらを同じ方法で扱うべきではありません。

それぞれ、適切な回収先や相談先を案内する必要があります。

ただし、ここで新しい全国共通のウェブシステムを一から構築することは前提にしません。

既にある自治体のごみ分別案内や、メーカーの回収情報、JBRCの協力店検索などを活用します。

重要なのは、情報が存在するだけではなく、住民が判断できることです。

例えば、膨張した電池について、通常の回収箱へ入れないよう注意書きがあったとします。

しかし、その先の引渡し先が示されていなければ、住民は困ってしまいます。

だからこそ、回収できないという説明だけで終わらせず、次に何をすればよいかを示すことが重要です。

提案②|自治体単独で難しい場合は、広域的な回収経路を確保する

第二に、回収体制です。

自治体によって、回収する量や処理事業者との距離は異なります。

人口が少ない地域では、専用の処理設備を単独で整備することが合理的でない場合もあります。

そこで、近隣自治体との協力や、既存の回収・処理事業者との契約を活用することを提案します。

ただし、広域的な回収そのものは、既に廃棄物処理の分野で行われている考え方です。

Japan Compassが独自に発明したものではありません。

今回の提案は、特に膨張・破損した電池の安全な引渡し先を確保するために、その実効性を確認することです。

例えば、ある自治体では、専門の処理事業者が近くに存在しないかもしれません。

その場合、近隣の自治体と協力し、適切な処理事業者へ引き渡す仕組みが考えられます。

ただし、安全に運搬できる条件を確認しなければなりません。

また、輸送距離が長くなれば、費用も増える可能性があります。

そのため、広域化によって必ず費用が下がると決め付けることはできません。

重要なのは、地域ごとの安全性と費用を確認することです。

提案③|実際に回収できたかを、対象品目と状態別に検証する

第三に、成果の測り方です。

現在の調査では、回収している市町村の割合が公表されています。

これは重要な情報です。

しかし、今回の86.2%という数字だけでは、住民が処分したい電池を実際に回収できるかまでは分かりません。

そこで、対象となる製品や電池の状態を分けて、回収状況を確認することを提案します。

例えば、通常のモバイルバッテリーです。

電池を取り外せない小型家電です。

メーカー不明品です。

そして、膨張・変形した電池です。

それぞれ、回収できる場所があるかを確認します。

また、住民が問い合わせてから、実際に引き渡せるまでに、どの程度の時間が必要なのかも重要です。

ただし、自治体の職員に新しい報告業務を大量に求めるべきではありません。

既に環境省が実施している市町村調査や、回収事業者が持っている情報を活用することが合理的でしょう。

そして、必要な範囲で調査項目を改善します。

回収制度の有無だけでなく、住民が実際に利用できたかを確認すること。

これが、今回の中心的な提案です。

提案④|回収と再資源化の費用を、製品のライフサイクル全体で考える

第四に、費用負担です。

使用済み電池の回収には費用がかかります。

回収場所の整備。

保管。

運搬。

安全管理。

そして、再資源化です。

さらに、膨張・破損した電池については、通常品とは異なる対応が必要になる可能性があります。

では、その費用を誰が負担するべきでしょうか。

私は、自治体だけに負担を集中させるべきではないと思います。

一方、メーカーへすべての費用を無条件に負担させればよいとも考えていません。

なぜなら、製品には違いがあるからです。

メーカーが特定できる製品があります。

既に自主回収が行われている製品もあります。

一方、メーカー不明品や、回収対象外の製品もあります。

さらに、家庭から出るものと、事業活動から出るものでは、責任の所在も異なります。

そのため、まず現在の制度で、誰がどの費用を負担しているのかを整理する必要があります。

その上で、安全な回収を維持するために不足している費用を確認します。

そして、自治体、製造・販売事業者、回収・処理事業者の役割を考えることが重要でしょう。

製品を販売した後の責任を、どこまで担うべきか。

この問題を、資源循環政策と製品安全政策の両方から考える必要があると思います。


財源・実施主体・制約

今回の提案を実施する場合、中心となるのは既存の行政機関と事業者です。

国では、環境省が廃棄物処理や資源循環に関する政策を担います。

経済産業省は、製品安全や製造・販売事業者の取組、資源循環などに関係します。

市町村は、家庭から排出される一般廃棄物の収集・処理に重要な役割を持っています。

さらに、メーカーや販売店、既存の自主回収団体、廃棄物処理事業者などが関わります。

ここで重要なのは、家庭から出る電池と、事業活動から出る電池を区別することです。

事業活動で発生した廃棄物については、その性質に応じて、事業者の処理責任や産業廃棄物に関する制度が適用されます。

家庭用電池と同じ自治体の収集に出せるとは限りません。

また、電池の種類や状態によって、安全な保管・運搬・処理方法が異なります。

こうした法制度を無視して、どこでも同じように回収できる仕組みを提案することは適切ではありません。

財源についても、慎重な検証が必要です。

例えば、自治体が新しく膨張した電池の回収を始める場合です。

安全な保管方法を整える必要があるかもしれません。

収集車両や運搬方法の変更が必要になる可能性もあります。

専門の処理事業者と契約しなければならない場合もあります。

さらに、職員への研修も必要でしょう。

こうした費用は、地域によって異なります。

人口が多い自治体と、離島の自治体では、同じ方法が最適とは限りません。

そのため、今回確認した39,282件、86.2%、41.3%という数字だけから、全国で必要な追加予算額を算定することはできません。

まず、現在の回収体制に必要な費用と、追加的な安全対策の費用を把握する必要があります。

その上で、既存の一般廃棄物処理の財源、国の関連支援、製造・販売事業者の自主回収に伴う負担などを整理します。

また、費用負担を考える際には、世代間の公平性にも注意が必要です。

現在販売されている製品だけでなく、過去に販売され、メーカーが分からなくなった製品も存在するからです。

そうした製品の処理費用を、誰がどのように負担するかという問題があります。

さらに、安全性については、費用削減だけを優先するべきではありません。

例えば、回収費用を抑えるために、膨張した電池を通常の電池と同じように保管した場合です。

それによって事故の危険が増えるのであれば、合理的な方法とはいえません。

反対に、必要以上に高額な設備をすべての自治体へ整備することも、財政上合理的とは限りません。

必要な安全基準を守りながら、地域に合った費用負担と運営体制を整えること。

ここが、今回の政策提案における重要な条件です。


2035ロードマップ

2026~2027年|処分先が分からない電池を、地域ごとに確認する

まず、環境省が2026年9月29日に公表した市町村調査を基準として、現在の回収状況を確認します。

特に、通常の電池と、膨張・変形した電池について、回収先が異なる場合を整理します。

また、電池を取り外せない製品や、メーカー不明品についても、適切な引渡し先が案内されているかを確認します。

この段階では、全国すべての自治体へ同じ回収方法を求めません。

既存の自治体の案内や、メーカーの自主回収制度を活用します。

その上で、住民が処分先を見つけられない状況を、どのように減らせるかを考えます。

2027~2029年|危険な電池の安全な回収経路を広げる

次に、膨張・破損した電池について、適切な保管・運搬・処理ができる体制を確認します。

自治体単独で難しい場合には、近隣自治体や専門事業者との連携を検討します。

ただし、回収場所を増やすことだけを目的にしません。

実際に、安全な方法で回収できているかが重要です。

また、職員や処理事業者の負担も確認する必要があります。

安全な回収体制を継続するには、設備と人材の両方が必要だからです。

2029~2031年|政府の2030年目標と実績を比較する

2025年12月の政府総合対策パッケージでは、2030年までに重大火災事故ゼロを目指すことが掲げられています。

そのため、2030年に向けて、事故の発生状況を継続して確認する必要があります。

ただし、事故件数の増減だけで、対策の成否を判断することは適切ではありません。

例えば、以前は報告されていなかった軽微な発煙事象が、報告体制の改善によって把握されるようになる可能性があります。

その場合、報告件数が増えても、実際の危険が同じ割合で増加したとは限りません。

また、製品の普及状況や回収量が変化すれば、事故件数の解釈も変わります。

そこで、事故の定義や集計方法を確認しながら、重大事故と軽微な発煙事象などを区別します。

報告された件数だけでなく、事故をどこまで減らせたかを正確に評価すること。

これが重要です。

2031~2033年|回収と再資源化の費用を検証する

次に、回収された電池が、その後どのように処理されているかを確認します。

安全な保管。

運搬。

選別。

再資源化。

こうした工程です。

また、回収された電池のすべてが、同じ方法で再資源化されるわけではありません。

電池の種類や状態によって、処理方法が異なる場合があります。

そこで、回収量だけでなく、実際にどの程度の資源が回収できたかも確認します。

さらに、処理に必要な費用と、資源としての価値を区別する必要があります。

回収した電池に有用な金属が含まれていても、その金属を取り出すためには費用がかかるからです。

そのため、すべての電池を回収すれば、必ず事業として利益が生まれるとは限りません。

安全を守るための費用と、資源を回収することによる価値。

この二つを分けて考える必要があります。

2033~2035年|使い終わった電池が、安全に循環する社会へ

2035年に目指したいのは、すべての自治体に同じ回収箱を設置することではありません。

また、電池を使わない社会にすることでもありません。

リチウムイオン電池は、今後もさまざまな製品に使用されるでしょう。

スマートフォン。

モバイルバッテリー。

電動工具。

電動アシスト自転車。

そして、さまざまな家庭用機器です。

重要なのは、それらを使い終わったときに、安全な引渡し先があることです。

正常な状態の電池は、適切な回収経路へ。

破損・膨張した電池は、それに対応できる安全な回収経路へ。

そして、回収された電池は、適切な処理と再資源化へ。

そのような流れを整えたいと思います。

使い終わった製品を、危険なごみとして放置するのではなく、安全に回収し、可能な範囲で資源として生かす社会。

それを、2035年の日本に向けた目標にしたいと思います。


2035日本再設計白書での位置付け

今回の#087は、第七部「地方創生」に位置付けます。

関連する横断テーマは、環境、資源循環、行政、財政、製品安全、産業競争力、エネルギーです。

Japan Compassでは、これまで地域の生活基盤について、複数の問題を扱ってきました。

#017では、蓄電池や地域の電力供給について考えました。

#028では、インフラの維持管理を検証しました。

#041では、気候変動への適応を取り上げました。

#060では、政策実施後の効果を確認する仕組みを検討しました。

今回の#087は、それらとは異なる論点です。

新しい蓄電池を導入することではありません。

電力を安定供給することでもありません。

気候変動への適応策でもありません。

使用済みの充電池について、住民が安全な引渡し先を確保できるかという問題です。

なぜ、これを第七部「地方創生」に置くのでしょうか。

私は、地域の生活を支える仕組みだからだと思います。

地方創生というと、新しい産業を育てることや、観光を振興すること、移住者を増やすことなどが注目されます。

もちろん、それらは重要です。

しかし、地域で生活するためには、ごみを安全に処理できることも必要です。

家庭から出る廃棄物を収集する。

適切に処理する。

事故を防ぐ。

そして、可能なものを資源として再利用する。

こうした仕事が、日常生活を支えています。

ごみ処理施設の火災を防ぐことは、地域の暮らしを守ることにもつながります。

さらに、リチウムイオン電池には、リチウム、コバルト、ニッケルなどの有用な資源が含まれる場合があります。

適切な回収と再資源化が進めば、資源循環や産業政策にも関係してきます。

ただし、すべての電池から同じ種類や量の資源を回収できるわけではありません。

電池の種類や構造、処理方法によって異なります。

そのため、資源循環の効果についても、実際の回収・処理データを確認する必要があります。

第七部「地方創生」では、地域の生活基盤を、単に施設の数だけで評価するのではなく、実際に安全に利用できるかという視点から考えていきます。


今日の提言

私は、今回の問題を考えながら、一つ大切なことがあると思いました。

それは、製品は、使っている間だけでなく、使い終わった後まで社会に影響するということです。

例えば、モバイルバッテリーです。

普段は、とても便利な製品です。

外出先でもスマートフォンを充電できます。

旅行中にも利用できます。

停電などの非常時にも役立つ場合があります。

私は、その便利さを否定する必要はないと思います。

しかし、どのような製品にも寿命があります。

長く使えば、性能が低下することがあります。

破損することもあります。

そして、いつか処分しなければならなくなります。

そのとき、製品を作ったメーカーだけでなく、使用した人、回収する人、処理する人にも関係する問題が生まれます。

例えば、膨らんだモバイルバッテリーです。

使うことはやめた方がよいと分かっていても、処分先が分からなければ、自宅に残してしまうかもしれません。

しかし、危険そうだからといって、ほかのごみに混ぜてしまうことは適切ではありません。

また、無理に分解したり、電池を取り出そうとしたりすることも危険です。

では、どうするべきでしょうか。

私は、住民が正しい処分方法を調べられることが重要だと思います。

しかし、それだけで十分でしょうか。

例えば、自治体のホームページを調べたとします。

そこには、通常の充電池の回収方法が書かれています。

しかし、膨張した電池については、何も説明がありません。

その場合、住民はどう判断すればよいのでしょうか。

「回収対象外です」

とだけ書かれていた場合も同じです。

その先の引渡し先が分からなければ、問題は解決しません。

だからこそ、私は、回収できないものについて、どこへ相談すればよいかまで示すことが重要だと思います。

もちろん、すべての自治体が同じ方法で対応する必要はありません。

都市部では、定期的な収集が合理的な場合があります。

一方、離島や山間地域では、別の方法が適切かもしれません。

重要なのは、その地域に合った安全な引渡し方法を確保することです。

そして、もう一つ大切なことがあります。

それは、ごみを収集し、処理する人たちの安全です。

私たちは、家庭からごみを出した後のことを、あまり意識しないかもしれません。

しかし、そのごみを収集する人がいます。

処理施設で働く人がいます。

設備を管理する人がいます。

その人たちが、安全に仕事をできることも重要です。

リチウムイオン電池が通常のごみに混入することによって、処理施設で火災が発生する可能性があります。

そのような事故を防ぐためには、住民の協力が必要です。

しかし、住民に正しく分別してほしいと求めるだけでは、十分ではありません。

正しい分別先を示す必要があります。

そして、実際に回収できる体制を整える必要があります。

住民に正しい行動を求めるなら、正しい行動を取れる仕組みも必要なのです。

私は、ここに今回の問題の本質があると思います。

環境省の調査では、回収している自治体は86.2%まで増えました。

これは前進です。

しかし、膨張・変形した電池については41.3%です。

私は、この違いを重要な課題として考えたいと思います。

もちろん、41.3%という数字だけで、残りの自治体が何もしていないと決め付けるべきではありません。

自治体以外の回収経路がある場合も考えられます。

それでも、住民が処分先を見つけられるかという問題は残ります。

だからこそ、今後は、回収制度の有無だけでなく、実際の利用可能性を確認する必要があると思います。

2035年の日本では、さらに多くの製品に充電池が使われているかもしれません。

そうなれば、使い終わった電池の回収は、今より重要になる可能性があります。

私は、製品の便利さと、使い終わった後の安全性を、別々に考えるべきではないと思います。

新しい技術が社会に広がるのであれば、その技術を安全に使い終えるための仕組みも必要です。

それが、持続可能な社会の条件の一つではないでしょうか。


読者への問い

最後に、少し想像してみてください。

あなたの家に、もう使わなくなったモバイルバッテリーがあるとします。

久しぶりに取り出してみると、本体が膨らんでいました。

もう使用するつもりはありません。

処分したいと思っています。

しかし、近くの回収店では、膨張した電池を受け付けていません。

自治体のホームページには、通常の充電池についての説明があります。

でも、膨張した電池については、出し方が分かりません。

そのとき、あなたはどうするでしょうか。

自治体へ電話するでしょうか。

メーカーへ問い合わせるでしょうか。

あるいは、処分方法が分かるまで、自宅で保管するでしょうか。

私は、このような状況を、住民の判断だけに委ねるべきではないと思います。

もちろん、住民にも正しい分別への協力が必要です。

しかし、協力しようとしている人が、適切な処分先を見つけられないのであれば、制度にも改善の余地があるでしょう。

ここで考えたいことがあります。

全国の自治体で、すべての使用済み充電池を回収できるようにするべきでしょうか。

それとも、自治体ごとに回収方法が異なっていても、安全な引渡し先さえ確保されていればよいのでしょうか。

また、回収と処理に必要な費用を、誰が負担するべきでしょうか。

自治体でしょうか。

メーカーでしょうか。

製品を購入する消費者でしょうか。

それとも、それぞれが役割に応じて負担するべきなのでしょうか。

簡単な答えはありません。

しかし、今後も充電池を利用する社会を続けるのであれば、避けて通れない問題だと思います。

最後に、読者の皆さんへ質問があります。

あなたは、使い終わった充電池について、どの地域でも安全に引き渡せることを、国や自治体が保障するべきだと思いますか。

そして、その仕組みを維持するための費用は、誰がどの程度負担するべきなのでしょうか。

新しい技術によって、私たちの生活は便利になっています。

しかし、その便利さは、製品を購入したときだけで完成するものではありません。

使い終わった後、安全に処分できること。

そして、可能なものを資源として生かせること。

私は、その両方があってこそ、持続可能な社会になると思います。

便利な製品を、安全に使い終えることができる日本へ。

それが、今日のJapan Compassの問いです。


データ出典・参考資料

1.環境省「市町村におけるリチウムイオン電池等の処理状況調査結果(令和7年度実績)及び関連事例集の公表について」

2026年9月29日公表。対象年度:2025年度。

今回の中心的な根拠資料です。

1,741市町村等の全数回答、リチウムイオン電池等に起因すると疑われる発煙・発火を含む火災事故等39,282件、職員または消防隊による消火が行われた9,456件を確認しました。

また、電池等を回収している市町村86.2%、膨張・変形した電池等を回収している市町村41.3%という実績を確認しました。

環境省|2025年度リチウムイオン電池等の処理状況調査

2.環境省「リチウムイオン電池総合対策パッケージの策定について」

2025年12月23日公表。

リチウムイオン電池の使用時・廃棄時の火災防止、回収・再資源化の促進、2030年までに重大火災事故ゼロを目指す政府方針について確認しました。

「3つのC」は既存の政府啓発活動であり、Japan Compass独自の提案として扱っていません。

環境省|リチウムイオン電池総合対策パッケージ

3.独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)「リチウムイオン電池搭載製品の事故に関する注意喚起」

2026年7月15日公表。対象事故:2021年~2025年。

リチウムイオン電池搭載製品について、5年間で2,140件の製品事故情報が収集されたことを確認しました。

この数字は環境省の市町村調査と集計対象が異なるため、合算していません。

NITE|2026年7月15日・リチウムイオン電池搭載製品の事故

4.一般社団法人JBRC「不要電池の出し方」

2026年10月28日確認。

小型充電式電池の自主回収制度、回収協力店、回収対象となる電池の条件について確認しました。

会員企業以外の製品、メーカー不明品、破損・水濡れ・膨張などの異常がある電池が回収対象外となることも確認しました。

JBRC|回収対象・対象外となる小型充電式電池

5.川崎市「充電式電池の出し方」

2025年11月に収集開始。2026年6月4日更新。

川崎市による充電式電池と電池内蔵製品の収集、膨張・変形した電池の区分、生活環境事業所への持ち込み方法などを確認しました。

本稿では川崎市の方法を、全国共通の排出方法として扱っていません。

川崎市|充電式電池・モバイルバッテリー等の出し方

6.欧州連合理事会「Council adopts new regulation on batteries and waste batteries」

2023年7月10日公表。

EUの電池規則について、携帯型使用済み電池の回収目標、軽量輸送手段用電池の回収目標、リチウム回収目標、拡大生産者責任について確認しました。

EUの回収目標は、日本の「回収を実施している自治体の割合」とは異なる指標であるため、直接比較していません。

欧州連合理事会|電池・使用済み電池に関する新規則


資料確認上の留意事項

本稿は、2026年10月28日時点で確認できる環境省、NITE、JBRC、自治体、欧州連合理事会などの公表資料に基づいています。

2025年度の39,282件は、発煙・発火を含む火災事故等の報告件数です。すべてが重大火災であったことや、原因がすべて確定していることを示す数字ではありません。

また、9,456件は職員または消防隊による消火が行われた火災事故等であり、39,282件に加算する別の事故群ではありません。

回収自治体86.2%は、電池または電池使用製品を回収している市町村の割合です。全国の86.2%の住民が、すべての種類・状態の電池を処分できることを意味しません。

膨張・変形した電池等の回収自治体41.3%についても、残りの自治体にメーカーや民間による回収経路が一切存在しないと断定することはできません。

NITEの2,140件は、2021年から2025年までの製品事故情報であり、環境省の市町村調査と合算していません。

2025年4月の環境省通知、同年12月の総合対策パッケージ、JBRCの自主回収制度は既存の取組です。Japan Compassが独自に創設した制度として扱っていません。

また、2026年度以降の火災事故等の実績、自治体別・品目別の回収能力、膨張した電池の処理費用、安全な回収による火災削減効果、回収された電池から実際に再資源化された量については、今回確認した資料から全国の確定値を提示できません。

そのため、根拠のない推計値や費用削減額は提示していません。

今回のJapan Compassの独自提案は、既存の自治体回収制度、メーカーの自主回収、処理事業者の仕組みを活用し、正常品だけでなく、破損・膨張品やメーカー不明品についても、安全な引渡し先へ到達できる状態を整えることです。

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