Japan Compass #083

大学の研究設備を外部の研究者や企業が利用するには、具体的な条件や手続きを明確にする必要があります。

大学の研究設備は、学外の研究者にも実際に使えるか

――全国4,250台の設備検索と2026年「EPOCH」始動。見つけることから、実際に研究へ使うことまでを考える

2026年10月24日|2035日本再設計プロジェクト|科学技術・大学研究・産業競争力編

日本の地方に、ある小さな製造会社があるとします。

従業員は30人ほど。

特殊な金属部品を製造しています。

ある日、製品の表面に非常に小さな異常が見つかりました。

目で見ても、原因は分かりません。

通常の顕微鏡でも、十分に確認できません。

そこで、より高度な分析装置を使って調べる必要が出てきました。

しかし、その装置は非常に高価です。

購入するには、多額の費用がかかります。

しかも、今回の分析が終わった後、いつ再び必要になるか分かりません。

年に数回しか使わない装置を、自社で購入することが合理的なのか。

経営者は悩みます。

ところが、調べてみると、近隣の大学に同じような装置があることが分かりました。

さらに、インターネットで全国の研究設備を検索できるサービスもあります。

ここまでは、よい話です。

しかし、問題はその先です。

その装置は、外部の企業でも利用できるのでしょうか。

大学の研究者と共同研究契約を結ばなければならないのでしょうか。

単に分析だけを依頼することは可能なのでしょうか。

料金はいくらでしょうか。

いつ利用できるのでしょうか。

サンプルを送れば分析してもらえるのでしょうか。

それとも、担当者が大学まで行く必要があるのでしょうか。

装置の操作には、専門の技術職員が必要かもしれません。

また、製品の開発情報が外部に知られないよう、秘密保持についても確認する必要があります。

こうした条件が分からなければ、装置の存在を見つけても、実際に利用する判断ができません。

ここに、今日考えたい問題があります。

研究設備が存在することと、その設備を必要な研究者や企業が実際に利用できることは、同じではありません。

日本では、研究力の低下や大学の研究環境について、さまざまな議論が行われています。

研究費を増やすべきだという意見があります。

大学の基盤的な経費を充実させるべきだという意見もあります。

若手研究者の雇用を安定させることも重要でしょう。

これらは、既にJapan Compass #046で検討しました。

今回は、もっと具体的な問題を考えます。

日本の大学や研究機関が持っている研究設備を、組織の垣根を越えて、どこまで活用できるのでしょうか。

そして、そのために必要なのは、新しい装置を購入することなのでしょうか。

それとも、既にある装置を利用しやすくすることなのでしょうか。

今日のJapan Compassでは、2026年に始まった設備検索サービスと、政府の研究基盤強化事業を確認しながら、日本の研究設備を実際に役立つ社会的な資産にする方法を考えます。


Executive Summary

結論から言います。

Japan Compassは、大学や公的研究機関の研究設備を、学内だけでなく、他大学や企業の研究開発にも活用できる環境を充実させるべきだと考えます。

ただし、すべての研究設備を無条件に外部開放することを提案するものではありません。

研究設備には、安全管理や専門的な操作が必要なものがあります。

機密性の高い研究に使われている場合もあります。

装置の保守や修理が必要な時間もあります。

大学自身の研究活動を優先しなければならない場合もあるでしょう。

そのため、単純に設備の稼働率を高めればよいとは考えていません。

重要なのは、利用できる設備について、誰が、どのような条件で、いつ、いくらで使えるのかが分かることです。

2026年1月、自然科学研究機構の分子科学研究所は、全国の大学や研究機関が保有する研究設備を横断検索できるサービスを公表しました。

同研究所の発表によると、2025年12月31日時点で、4,250台の設備情報が登録されています。

しかし、実際の検索サービスには重要な注意書きがあります。

検索される設備には、共用の対象ではない装置も含まれるというものです。

つまり、4,250台という数字は、外部の研究者が予約して利用できる設備の数ではありません。

また、2026年7月31日、文部科学省は「先端研究基盤刷新事業(EPOCH)」について、47件の応募から19件を採択したと発表しました。

全国68大学、51国立高等専門学校を含む180機関以上が参画する計画です。

これは、日本の研究基盤を強化するための重要な取組です。

ただし、19件が採択されたことと、参画するすべての機関で外部向けの設備利用が実現したことは同じではありません。

そこで、Japan Compassは四つの改善を提案します。

第一に、既存の設備検索サービスと各大学の公開情報を活用し、外部利用の条件を分かりやすくすること。

第二に、問い合わせから実際の測定・分析までにかかる時間と、利用できなかった理由を確認すること。

第三に、設備を操作・維持する技術職員の費用を含め、持続可能な料金と運営体制を整えること。

第四に、設備の新規購入を検討する際、既存設備の共用で対応できるかを確認することです。

目指すのは、登録された装置の数を増やすことだけではありません。

設備を必要とする人が、実際に測定や分析を行い、研究開発を前へ進められること。

それを成果として評価するべきだと考えます。


1|日本には、既に全国の研究設備を探す仕組みがある

まず、現在の取組を確認します。

2026年1月、自然科学研究機構の分子科学研究所は、研究設備を横断的に検索できる新しいサービスを発表しました。

名称は「研究設備検索ツール」です。

このサービスでは、全国の大学や研究機関が公開している研究設備情報を検索できます。

装置の種類や測定方法などから、必要な設備を探すことができます。

例えば、特定の材料を分析したい場合です。

従来なら、複数の大学や研究機関のウェブサイトを一つずつ調べなければならなかったかもしれません。

しかし、横断検索ができれば、目的に合う装置を見つけやすくなります。

これは、研究者だけでなく、企業の技術者にとっても意味があります。

特に、高額な分析装置を保有することが難しい中小企業やスタートアップにとって、有用な入口になる可能性があります。

分子科学研究所の発表では、2025年12月31日時点で、4,250台の設備が登録されています。

ただし、ここで重要な点があります。

実際の検索ツールの案内には、検索結果に共用の対象ではない研究設備も含まれていることが明記されています。

また、共同利用や共同研究を希望する場合には、設備を保有する機関の利用規定を確認し、担当部署へ相談するよう案内されています。

これは、とても重要な説明です。

例えば、検索で目的の電子顕微鏡を見つけたとします。

しかし、その装置が現在、大学内の特定の研究に使用されているかもしれません。

あるいは、外部の企業による利用を受け付けていない場合もあります。

利用できる場合でも、事前の審査や予約が必要かもしれません。

つまり、検索できることは大きな前進ですが、それだけで研究設備を利用できることにはなりません。

私は、今回のサービスを評価する際に、この違いを明確にする必要があると思います。

装置を見つけられることは、研究設備へのアクセスの第一段階です。

しかし、本当の目的は、その先にあります。


2|2026年、政府は研究設備と研究支援人材の強化を始めた

次に、政府の取組です。

2026年7月31日、文部科学省は「先端研究基盤刷新事業(EPOCH)」の採択結果を発表しました。

全国の研究大学などから47件の提案があり、19件を採択しました。

この事業には、全国68の国公私立大学、51の国立高等専門学校を含む180機関以上が参画します。

EPOCHが目指しているのは、単に新しい研究装置を購入することではありません。

研究設備を組織的に管理し、共用し、高度化するための仕組みを整えることです。

さらに、その設備を支える技術職員やURAなどの研究支援人材も重視されています。

ここでいうURAは、University Research Administratorの略です。

研究資金の獲得や研究プロジェクトの運営、産学連携などを支援する専門人材を指します。

こうした人材と研究設備を組み合わせた研究基盤は、「コアファシリティ」と呼ばれています。

政府が設備だけでなく、研究支援人材を含めて強化しようとしていることには意味があります。

なぜなら、高度な研究設備は、購入すれば自動的に使えるものではないからです。

例えば、電子顕微鏡です。

試料の準備が必要です。

装置の調整が必要です。

測定条件を適切に設定する必要があります。

得られた画像やデータを、正しく解釈するための知識も必要でしょう。

また、装置には定期的な点検や保守が必要です。

不具合が起きれば、修理しなければなりません。

こうした業務を、研究者だけで担うことは容易ではありません。

そこで、専門的な技術を持つ人材が重要になります。

EPOCHは、このような研究環境を支えるための既存の政府事業です。

Japan Compassが新しく考案したものではありません。

そして、#046でも、この事業を取り上げました。

今回、考えたいのはさらに具体的な問題です。

このような研究基盤の強化によって、別の大学や企業の研究者が、実際に設備を使いやすくなるのでしょうか。

採択件数ではなく、その後の利用実績を確認する必要があると思います。


3|研究設備の「検索」と「利用」の間には、何があるのか

例えば、ある企業が大学の分析装置を利用したいと考えた場合、実際には複数の確認が必要になります。

最初に、目的に合う装置を探します。

次に、その装置が外部利用を受け付けているか確認します。

受け付けている場合には、誰が利用できるのかを調べます。

大学の研究者だけでしょうか。

公的研究機関の研究者も利用できるのでしょうか。

民間企業は対象なのでしょうか。

個人の研究者でも利用できる場合があるのでしょうか。

次に、利用方法です。

利用者が装置を自分で操作する方式でしょうか。

専門の技術職員に測定を依頼する方式でしょうか。

大学との共同研究契約が必要なのでしょうか。

それとも、分析サービスとして依頼できるのでしょうか。

さらに、料金の確認も必要です。

装置の使用時間によって料金が決まるのか。

試料の数で決まるのか。

測定方法によって異なるのか。

技術職員の作業費は含まれるのか。

材料費や消耗品費は別なのか。

そして、予約です。

利用したい時期に装置が空いているでしょうか。

いつまでに申請する必要があるのでしょうか。

測定結果を受け取れるのは、いつになるのでしょうか。

ここまで進んで、初めて実際の研究計画を立てられます。

もちろん、すべての研究設備について、同じ利用条件を設けることは難しいでしょう。

装置の種類も、危険性も、必要な技術も異なるからです。

しかし、利用条件が分からないままでは、研究者や企業は判断できません。

例えば、装置の利用料金が合理的であっても、その情報が見つからなければ、問い合わせをためらう可能性があります。

逆に、外部利用できない装置については、そのことが明確になっていれば、別の設備を探す判断ができます。

必要なのは、すべての装置を自由に使えるようにすることではありません。

利用できるかどうかを、できるだけ早く判断できるようにすることです。

私は、そこに改善の余地があると思います。


4|本当に不足しているのは、装置なのか、運用する人なのか

研究設備について考えるとき、どうしても装置そのものに注目しがちです。

高性能な装置がある。

新しい装置を購入する。

大きな研究施設を整備する。

こうしたことは、目に見えやすい成果です。

しかし、装置だけでは研究は進みません。

例えば、非常に高性能な測定装置があったとします。

ところが、その装置を操作できる技術職員が一人しかいなかったらどうでしょうか。

その人が休暇を取っている場合、測定できないかもしれません。

装置が故障した場合には、修理対応が優先されるでしょう。

新しい測定方法を開発する時間も必要です。

さらに、学内の研究者から多数の依頼がある場合には、外部の利用者を受け入れる余裕がないかもしれません。

つまり、装置が空いているように見えても、実際には利用できない場合があります。

反対に、十分な技術支援体制があれば、一つの装置でさまざまな研究を支援できる可能性があります。

ここで重要になるのが、技術職員の雇用と専門性です。

高度な研究設備を扱う人には、長年の経験が必要になる場合があります。

装置の操作だけでなく、試料の特性や測定条件、測定結果の信頼性について理解している必要があるからです。

そのため、外部利用を増やすことだけを求めて、技術職員の仕事を増やし続けることは適切ではありません。

設備の共用を進めるなら、それを支える人の時間と費用も、制度の中で考える必要があります。

また、技術職員の育成にも時間がかかります。

短期的に利用件数だけを増やすことが、長期的な研究基盤の強化につながるとは限りません。

私は、研究設備の利用状況を評価する際には、装置の稼働時間と、技術職員の業務負担を分けて確認するべきだと思います。


5|研究設備を外部へ開放することで、何が変わるのか

研究設備の共用には、いくつかの利点があります。

第一に、設備を重複して購入する必要を減らせる可能性があります。

例えば、隣接する二つの研究機関が、それぞれ高額な装置を購入しようとしていたとします。

利用する目的や必要な時期が大きく重ならないのであれば、一つの装置を共同で利用する方が合理的な場合があります。

ただし、すべての設備について共同利用が有利というわけではありません。

日常的に長時間使う装置であれば、それぞれ保有する方が合理的かもしれません。

試料の輸送が難しい場合もあるでしょう。

第二に、小規模な大学の研究者にも、研究機会を広げられる可能性があります。

すべての大学が、最先端の研究設備を一通り保有することは現実的ではありません。

しかし、他大学の設備を利用できれば、自分の大学に装置がなくても研究を進められる場合があります。

第三に、中小企業の研究開発を支えられる可能性があります。

例えば、新素材の開発です。

装置を購入する前に、必要な分析だけを外部へ依頼できれば、研究開発上の選択肢が増えます。

第四に、技術的な交流が生まれることも考えられます。

企業が大学の装置を利用する過程で、専門的な知見を持つ研究者や技術職員と出会う場合があります。

それが共同研究につながる可能性もあるでしょう。

ただし、これらは期待される効果です。

実際にどれだけの費用削減や研究開発の加速が生まれているかについて、今回確認した資料だけで全国的な数字を示すことはできません。

ここを推測で埋めるべきではありません。

研究設備の共用が重要であることと、共用によってどれだけの成果が生まれたかは、別に確認する必要があります。


6|研究設備の外部利用には、慎重に考えるべき問題もある

一方、すべての設備を外部利用へ開放すればよい、という考え方には問題があります。

まず、安全性です。

例えば、強いレーザーや放射線を利用する設備があります。

危険な薬品を扱う装置もあります。

このような設備について、十分な訓練を受けていない人が自由に操作することはできません。

また、設備によっては、利用者が現場で操作するよりも、専門職員が分析を請け負う方が適切な場合があります。

次に、研究情報の秘密です。

企業が新製品の分析を依頼する場合、その試料自体に技術上の秘密が含まれていることがあります。

測定条件や分析結果についても、外部へ公開できない場合があるでしょう。

そのため、秘密保持やデータの取扱いについて、事前に契約が必要になることがあります。

また、研究の内容によっては、輸出管理や研究セキュリティに関する確認も必要です。

すべての研究を無条件に受け入れることはできません。

さらに、装置の維持管理です。

研究設備には、点検や校正が必要です。

部品を交換しなければならない場合もあります。

故障した際には、修理に時間がかかります。

外部利用を増やした結果、設備が適切に保守されなくなれば、本来の研究活動にも影響が出るかもしれません。

そして、大学自身の研究です。

大学が保有する設備には、大学の教育研究のために整備されたものがあります。

外部利用を優先するあまり、学内の研究者が必要な時期に利用できなくなれば、研究基盤を強化する目的が損なわれます。

そのため、私は外部利用を増やす場合には、安全性、秘密保持、維持管理、学内研究との優先順位を明確にする必要があると思います。

装置ごとに、利用できる範囲が異なってよいのです。

重要なのは、その条件が合理的で、利用希望者に分かりやすく示されていることです。


7|海外事例:英国では、設備検索と利用料金を組み合わせている

参考になるのが英国です。

英国には、Jiscが運営する「Equipment Data Service」という研究設備の情報サービスがあります。

大学や研究施設の設備情報を集約し、組織を越えて検索できる仕組みです。

このサービスは、2025年に更新されました。

設備を見つけやすくするだけでなく、設備情報の記録や、研究成果に関連する設備の識別なども重視されています。

また、英国の研究資金配分機関UK Research and Innovationの助成条件では、一定額を超える新しい研究設備について、全国の設備データベースへの登録が求められています。

Jiscの説明では、その基準額は13万8,000ポンドを超える設備です。

ただし、ここで注意したいことがあります。

データベースへ登録された設備が、すべて外部の研究者に利用可能という意味ではありません。

設備を検索できることと、利用予約できることは、英国でも別の問題です。

もう一つ、参考になるのが、英国のUniversity College London(UCL)です。

UCLでは、1,500件を超える主要な研究設備や施設の情報を検索できるカタログを運用しています。

また、外部の大学研究者や企業、医療機関などに対して、共同研究や有料サービスの形で研究設備を利用できる仕組みを設けています。

ただし、すべての設備が同じ条件で利用できるわけではありません。

装置や研究分野、契約内容などによって、条件は異なります。

ここで特に参考になるのが、費用の考え方です。

UCLでは、研究設備の費用について、TRACと呼ばれる原価計算の仕組みを用いています。

施設によっては、技術職員の人件費、維持管理費、消耗品費、設備の減価償却費などを含めて、利用料金を算定します。

また、研究資金の提供者や企業利用などの区分によって、適用する料金が異なる場合があります。

これは、設備の利用料金を単に安くすればよい、という考え方とは異なります。

研究設備を継続して利用できるようにするためには、必要な費用を把握しなければなりません。

私は、日本でも、この点が重要だと思います。

ただし、英国の制度をそのまま導入することを提案するものではありません。

日本の大学にも、既に共用設備の料金体系や外部利用制度があります。

重要なのは、英国に新しい制度があり、日本には何もないという比較ではありません。

設備を検索できること、利用条件が分かること、費用を説明できること、実際に利用できることを、どのようにつなげているか。

その運営方法を参考にすることです。


8|賛成論と慎重論:研究設備の共用をどこまで進めるべきか

ここまでの内容を踏まえると、研究設備の共用には利点があります。

高額な装置を必要なときだけ利用できれば、研究開発の選択肢が広がります。

大学間の共同研究も進めやすくなる可能性があります。

地方の中小企業にとっても、設備投資以外の方法を選べるようになるでしょう。

また、既存設備を有効に活用できれば、新しい設備を購入する際の判断材料にもなります。

一方、共用を進めることには費用がかかります。

装置を維持する費用です。

技術職員の人件費です。

予約や契約を管理する費用です。

安全管理や秘密保持への対応も必要です。

そのため、外部利用を増やせば、必ず大学の経営が改善するというわけではありません。

例えば、外部利用のために専門職員を追加配置したとします。

利用件数が少なければ、その人件費を利用料金だけで賄うことは難しいかもしれません。

逆に、利用料金を高くし過ぎれば、資金の少ない研究者や中小企業が利用しにくくなる可能性があります。

また、大学によって、研究設備の種類や利用需要も異なります。

最先端の装置が集まる大学もあるでしょう。

特定の研究分野に強みを持つ大学もあります。

地域の企業との連携に適した設備を保有する大学もあります。

すべての大学が、同じ種類の設備を持つ必要はありません。

そして、すべての大学で、外部利用件数を同じ目標にすることも合理的ではないと思います。

例えば、特殊な研究装置では、測定の準備に長い時間が必要になる場合があります。

一つの測定に数日かかることもあるでしょう。

そのような設備と、短時間で多数の試料を分析できる装置を、単純に利用件数だけで比較することはできません。

研究設備の共用を評価するなら、装置の種類と利用目的に応じた判断が必要です。

そして、学内研究のための利用と、学外利用の両方が成り立つことが重要だと思います。


Japan Compass政策提案

「設備が見つかった」から「研究が実際に進んだ」までを確認する

今回の政策提案では、新しい全国的な設備検索サービスを一から構築することを前提にしません。

既に、分子科学研究所による研究設備検索ツールがあります。

大学や研究機関ごとの設備情報公開も行われています。

さらに、2026年にはEPOCHが始まりました。

そのため、Japan Compassが考えたいのは、既存制度の先にある実務上の問題です。

提案①|外部利用の条件を、設備ごとに分かりやすくする

第一に、設備情報の充実です。

研究設備の名称や所在地だけでなく、外部利用について必要な情報が分かるようにします。

例えば、外部利用を受け付けているかどうかです。

大学・研究機関の研究者が対象なのか。

民間企業も利用できるのか。

共同研究契約が必要なのか。

分析だけを依頼できるのか。

自分で操作する必要があるのか。

技術職員が測定を行うのか。

料金はどのように決まるのか。

見積りはどこへ依頼するのか。

こうした情報です。

ただし、すべての装置について、詳細な料金表を全国一律に公開することは難しい場合があります。

試料や測定条件によって、費用が変わるからです。

そこで、料金の目安を示せる場合には示し、個別見積りが必要な場合には、そのことを明確にします。

また、設備が外部共用の対象ではない場合には、その状態を分かりやすく示します。

重要なのは、検索する人が、無駄な問い合わせを繰り返さなくて済むことです。

ただし、情報の更新には手間がかかります。

そのため、既存の設備管理情報を活用し、担当者の入力負担をできるだけ減らす方法を検討する必要があります。

提案②|問い合わせから測定完了までの実際の時間を確認する

第二に、利用に至るまでの時間です。

私は、ここを特に重視したいと思います。

例えば、ある企業が設備の利用を希望したとします。

問い合わせを行いました。

利用条件を確認しました。

見積りを受け取りました。

予約が確定しました。

そして、実際に測定が行われました。

この一連の流れに、どのくらいの時間がかかったのでしょうか。

また、利用できなかった場合、その理由は何だったのでしょうか。

装置が利用できなかったのか。

技術職員を確保できなかったのか。

試料が安全上の条件を満たさなかったのか。

利用料金が予算に合わなかったのか。

あるいは、利用者が自分の判断で計画を変更したのか。

これらは、まったく異なる問題です。

そのため、単に問い合わせ件数と利用件数を比較するだけでは十分ではありません。

利用できなかった理由を区別する必要があります。

ただし、個別の研究内容や企業秘密まで、全国的に集めるべきではありません。

必要な情報は、装置の利用状況を評価できる範囲に限定します。

また、研究設備には測定期間が長いものもあるため、すべての装置へ同じ処理日数の目標を設定するべきではありません。

設備の種類に応じて、実際の利用にかかる時間を確認することが合理的です。

装置を見つけてから、実際に測定結果を得るまで。

この過程を評価することが、今回の提案の中心です。

提案③|設備を維持する費用と、技術職員の役割を明確にする

第三に、運営費用です。

研究設備の共用には、装置の購入費だけでなく、維持管理費が必要です。

定期点検。

校正。

修理。

消耗品。

施設の維持。

そして、専門の技術職員です。

これらの費用を把握しなければ、外部利用を増やしても、継続的な運営が難しくなる可能性があります。

そこで、設備ごとに必要な費用を整理します。

ただし、すべての費用を利用者だけに負担させるべきだとは限りません。

例えば、基礎研究のための設備には、公共的な役割があります。

資金が十分ではない若手研究者や、小規模な大学の研究者にも利用機会を確保することが重要な場合があります。

一方、民間企業が製品開発のために設備を利用する場合には、合理的な費用負担が必要でしょう。

そのため、利用目的や研究資金の性質に応じた料金体系を考える必要があります。

また、技術職員の仕事を、単なる装置の付属業務として扱うべきではありません。

高度な測定を支える専門的な仕事です。

必要な人員を確保し、育成し、継続して働ける環境を整えることが重要です。

研究設備を共有するなら、その設備を支える専門職の仕事と費用も共有の仕組みに含めるべきです。

提案④|新しい設備を購入する前に、既存設備の利用可能性を確認する

第四に、設備投資です。

高額な研究装置を購入する場合、既に近隣の大学や研究機関に同じような設備が存在する可能性があります。

そこで、新規購入を検討する際に、既存設備の共用で対応できるかを確認することを提案します。

ただし、これはすべての設備について購入を認めないという意味ではありません。

例えば、日常的に使用する装置の場合です。

外部施設へ移動するよりも、自分の研究室に設置する方が合理的かもしれません。

機密性の高い研究でも、設備を自ら保有する必要がある場合があります。

また、外部施設の利用料金や輸送費、待ち時間を考えると、新しく購入した方が合理的な場合もあるでしょう。

したがって、単純に全国の装置数を減らすことを目的にはしません。

必要なのは、既存設備を利用する場合と、新しく購入する場合の費用・時間・研究上の制約を比較することです。

そして、共用設備で対応できる場合には、その選択肢を研究者が利用しやすくすることです。

私は、そのような判断が積み重なれば、研究費の使い方を改善できる可能性があると思います。


財源・実施主体・制約

今回の提案を実施する際には、まず既存の制度と予算を整理する必要があります。

中心となるのは、研究設備を保有する大学や研究機関です。

設備の利用条件、料金、安全管理、秘密保持、予約管理などについては、各機関が重要な役割を担います。

また、設備の運営を担う技術職員や、研究支援を行うURAなどの専門人材も必要です。

国の役割としては、文部科学省による研究基盤政策があります。

2026年に始まったEPOCHも、その一つです。

事業の実施には、科学技術振興機構(JST)が関わります。

ここで、EPOCHの財政上の条件を確認します。

JSTの公募情報によると、当初3年間の支援額は、施設整備を伴わない場合、1大学当たり最大30億円程度です。

施設整備を伴う場合には、事業費として最大20億円程度、施設整備費として最大20億円程度が示されています。

ただし、これらは公募時に示された支援額の上限です。

すべての採択大学へ上限額が交付されたという意味ではありません。

また、事業期間は10年間を予定していますが、2029年度以降については、その時点の予算措置や各機関の取組状況などを踏まえて判断されます。

したがって、10年間の資金がすべて確定しているわけではありません。

この点は、長期的な研究設備の運営を考える上で重要です。

例えば、当初3年間の支援によって、新しい研究設備や技術支援体制を整えたとします。

しかし、その後の維持管理費や人件費を確保できなければ、設備の利用を継続することが難しくなる可能性があります。

だからこそ、新しい装置を導入する際には、購入費だけでなく、その後の運営費も考える必要があります。

今回のJapan Compassの提案では、既存の設備検索や共用事業の運用情報を活用することを基本とします。

最初から新しい全国情報システムを構築することは前提にしません。

まずは、EPOCHの採択機関や、既に外部共用を行っている研究施設などで、利用者がどの段階で困っているのかを確認することが考えられます。

ただし、全国でどれだけの追加費用が必要になるかについて、今回確認した資料だけでは算定できません。

技術職員の人数。

設備の種類。

保守費用。

利用希望の件数。

地域の条件。

こうした要素によって、必要な費用が異なるからです。

そのため、根拠のない全国予算額は提示しません。

まず、実際の運営情報を確認し、必要な費用を整理します。

また、研究設備の外部利用には法的・契約上の制約もあります。

安全管理に関する法令。

研究セキュリティ。

輸出管理。

秘密保持。

知的財産。

こうした問題について、既存の規定を尊重する必要があります。

大学が公的資金で購入した設備だからといって、すべての人が無条件に利用する権利を持つわけではありません。

同時に、公的資金で整備された設備を、合理的な理由なく組織内部だけで利用し続けることが適切かどうかも、検討の対象になり得ます。

公的な研究基盤としての役割と、各研究機関の管理責任を両立させること。

これが、制度を改善する上で必要な考え方だと思います。


2035ロードマップ

2026~2027年|既存設備の外部利用条件を確認する

まず、既に公開されている研究設備の情報を活用します。

分子科学研究所の検索ツールや、各大学の設備公開情報などを入口にします。

その上で、外部利用が可能な設備について、利用者の条件、問い合わせ先、利用方法、料金の説明などが分かりやすく示されているかを確認します。

外部利用できない設備についても、そのことを明確にできるかを検討します。

この段階では、全国すべての設備情報を一度に更新することを目標にしません。

まず、既に共用を行っている施設を対象に、改善できる部分を確認します。

2027~2029年|実際の利用に至るまでの時間と費用を検証する

次に、外部からの問い合わせについて、どのような結果になったかを確認します。

問い合わせを受け付けた。

利用条件を確認した。

見積りを提示した。

予約が確定した。

実際に測定が行われた。

分析結果が提供された。

こうした段階を、必要な範囲で整理します。

また、利用できなかった場合には、その理由を確認します。

ただし、研究内容や企業秘密を不必要に収集することは避けます。

設備の種類による違いを踏まえ、利用者の負担や運営側の業務負担も検証します。

2029~2031年|設備の維持と技術職員の費用を検証する

2029年度以降は、EPOCHの継続的な予算措置についても判断が必要になります。

そのため、それまでの利用実績や設備の運営費用を確認することが重要です。

設備の購入費。

保守費用。

消耗品費。

技術職員の人件費。

外部利用のための契約・事務費用。

こうした費用を整理し、継続して利用できる運営体制を考えます。

この段階では、利用件数を増やすことだけを評価しません。

学内研究への影響や、安全管理、技術職員の負担も確認します。

2031~2033年|設備投資と共用の判断を改善する

研究設備の運用情報が蓄積された段階で、新しい設備を購入する際の判断にも活用します。

既存設備で対応できるのか。

外部利用に必要な費用はいくらか。

利用までにどれだけ時間がかかるのか。

新しい設備を保有する場合の維持管理費はいくらか。

こうした情報を比較します。

ただし、研究に必要な装置の整備を抑えることだけを目的にはしません。

新しい研究分野では、既存設備では対応できない場合もあります。

その場合には、新規投資が必要です。

重要なのは、研究上の必要性と費用を適切に判断することです。

2033~2035年|必要な研究設備へアクセスできる社会へ

2035年に目指したいのは、すべての大学が同じ設備を保有することではありません。

また、すべての研究設備を、誰でも自由に利用できる状態にすることでもありません。

目指したいのは、必要な研究を進めるために、利用できる設備を見つけ、適切な条件で利用できることです。

大きな大学の研究者だけでなく、小規模な大学の研究者も。

大企業だけでなく、中小企業やスタートアップも。

研究の内容と利用条件が合う場合には、必要な設備へアクセスできること。

そして、その設備を支える技術職員が、専門性を発揮しながら継続して働けること。

研究設備を「持っていること」だけでなく、「研究に実際に役立っていること」で評価する社会。

それを、2035年に向けた目標にしたいと思います。


2035日本再設計白書での位置付け

今回の#083は、第三部「経済」に位置付けます。

関連する横断テーマは、科学技術、大学研究、産業競争力、地方創生、研究支援人材です。

Japan Compassでは、既に科学技術に関する複数の問題を扱ってきました。

#010では、半導体・AIと経済安全保障について考えました。

#031では、教育とAI、教師の負担を検討しました。

#046では、研究者の研究時間、大学の研究費、研究支援人材、設備共用を総合的に扱いました。

#056では、博士号を取得した人材が、大学の外でも専門性を生かせるかを検証しました。

#061では、国が戦略技術を選ぶ税制と、産業競争力の関係を考えました。

#065では、国際共同研究と研究セキュリティを取り上げました。

また、#071では、公的な研究費によって生まれた論文を、誰でも速やかに読めるようにする制度を検証しました。

今回の#083は、これらの論点と関係しています。

しかし、中心となる問いは異なります。

研究者が研究に使える時間を増やすことでもありません。

研究論文を公開することでもありません。

戦略技術への税制上の支援を考えることでもありません。

大学が保有する研究設備を、組織の外にいる研究者や企業が、実際に利用できるかという問題です。

ここには、経済政策としての意味があります。

例えば、中小企業が新しい材料を開発しようとしている場合です。

自社に高額な分析装置がなくても、必要な分析を大学へ依頼できれば、研究開発の選択肢が広がる可能性があります。

また、小規模な大学の研究者が、他大学の設備を利用できれば、研究に必要な設備をすべて自分の大学へ整備する必要がなくなる場合があります。

もちろん、その効果は研究分野や設備の種類によって異なります。

設備の共用だけで、日本の産業競争力が高まると断定することはできません。

しかし、研究開発のための設備へアクセスできることは、新しい技術を生み出すための条件の一つです。

そして、その条件を改善することは、大学の規模や企業の資金力によって、研究の機会が過度に左右される状況を減らすことにつながる可能性があります。

第三部「経済」では、研究費や設備投資の金額だけでなく、その投資によって、実際に研究開発がどこまで進められるのかという視点を重視していきます。


今日の提言

私は、今回の問題を考えるとき、一つ印象に残る数字があります。

4,250台。

2025年12月31日時点で、分子科学研究所の検索サービスに登録されていた研究設備の数です。

日本には、それだけ多くの研究設備を検索できる仕組みがあるのです。

もちろん、これは全国すべての研究設備の数ではありません。

また、その4,250台すべてを外部の人が利用できるわけでもありません。

それでも、研究設備を探しやすくする取組が進んでいることには意味があります。

私は、このような取組を大切にしたいと思います。

しかし、そこで考えることを終わらせたくありません。

例えば、地方の小さな会社が新しい製品を開発しているとします。

どうしても、高度な分析が必要になりました。

でも、自社で装置を購入することは難しい。

そこで、研究設備検索ツールを利用しました。

目的に合いそうな装置が見つかりました。

ところが、その装置が外部利用できるかどうか分かりません。

問い合わせ先を探します。

利用条件を確認します。

見積りを依頼します。

そして、予約できるかを調べます。

もし、その過程で何度も問い合わせを繰り返さなければならなかったら、どうでしょうか。

研究開発の担当者は、本来の仕事以外に多くの時間を使うことになります。

また、利用できるか分からなければ、研究計画も立てにくくなるでしょう。

反対に、利用条件が分かりやすく示されていたらどうでしょうか。

外部利用が可能かどうか分かる。

料金の目安が分かる。

必要な手続が分かる。

いつ頃測定できるか、相談できる。

そのような状態なら、研究開発の判断はしやすくなると思います。

もちろん、どの装置でも簡単に予約できるようにするべきだとは考えていません。

専門的な設備には、安全上の制約があります。

企業秘密の問題もあります。

大学自身の研究計画もあります。

だからこそ、利用条件を明確にする必要があるのです。

そして、私はもう一つ重要なことがあると思います。

それは、装置を動かす人です。

研究設備は、購入して設置すれば、それで完成するものではありません。

高度な装置を適切に動かし、測定結果の信頼性を守るためには、専門的な人材が必要です。

その人たちの仕事を、十分に評価しなければなりません。

外部利用を増やすために、技術職員の負担ばかりが増えるような制度にしてはいけないと思います。

研究設備の価値は、装置そのものだけで決まるわけではありません。

それを使う技術。

維持する知識。

適切な測定を行う経験。

そうしたものによって、研究設備は実際の研究に役立つものになります。

2026年、日本ではEPOCHという大きな研究基盤強化事業が始まりました。

設備と支援人材を一体として整える方向性には、意味があると思います。

だからこそ、今後は、その成果を確認する必要があります。

設備が何台増えたのか。

研究拠点が何か所できたのか。

それだけではありません。

必要な人が利用できたのか。

実際に測定や分析ができたのか。

研究開発を進めるための時間や費用が、どう変わったのか。

私は、そこまで確認することが重要だと思います。

研究設備は、所有することが目的ではありません。研究に役立てることが目的です。

その当たり前のことを、研究基盤政策の成果として、もっと重視していく必要があるのではないでしょうか。


読者への問い

最後に、皆さんへ一つ考えていただきたいことがあります。

日本には、多くの大学や研究機関があります。

それぞれが、長い時間をかけて研究設備を整備してきました。

高額な分析装置もあります。

専門的な技術を持つ職員もいます。

研究者が積み重ねてきた知識もあります。

一方、日本には多くの中小企業があります。

新しい技術を開発したい会社もあるでしょう。

製品の品質を改善したい会社もあるでしょう。

しかし、必要な研究設備をすべて自社で購入できるわけではありません。

では、大学が持っている設備を、もっと活用できないでしょうか。

もちろん、すべての設備を自由に使えるようにすることはできません。

安全管理が必要です。

秘密保持も必要です。

大学自身の研究活動を守ることも重要です。

そして、設備の維持管理には費用がかかります。

それでも、利用できる設備については、必要な人が利用しやすい環境を作ることに意味があると思います。

例えば、新しい装置を1台購入する予算があるとします。

その予算を使って、新しい設備を導入することがよい場合もあるでしょう。

しかし、近くに同じような装置があり、それを利用できるのであれば、別の使い方が合理的な場合もあります。

技術職員を確保する。

設備の維持管理を充実させる。

研究者が利用しやすい仕組みを整える。

こうした選択肢です。

もちろん、どれが最適なのかは、研究内容や利用状況によって変わります。

だからこそ、必要な情報を集めて判断することが重要だと思います。

最後に、皆さんへ質問があります。

あなたは、大学の研究設備について、新しい装置を増やすことと、既にある装置を学外の研究者や企業が利用しやすくすることの、どちらを優先するべきだと思いますか。

そして、その判断を行うとき、何を成果として確認するべきなのでしょうか。

設備の数でしょうか。

利用件数でしょうか。

それとも、設備を利用することで実際に生まれた研究成果や技術開発でしょうか。

私は、2035年の日本に向けて、研究設備を単なる大学の資産としてではなく、研究と技術開発を支える社会の基盤として考えることに意味があると思います。

必要な研究を、必要な設備で進められる社会。

その実現に向けて、既にある研究設備を、どのように生かしていくか。

それが、今日のJapan Compassの問いです。


データ出典・参考資料

1.自然科学研究機構 分子科学研究所「共用設備は社会の宝、知のインフラをあなたの元へ」

2026年1月公表。設備登録数の基準日は2025年12月31日。

全国の大学・研究機関にある研究設備を横断検索できるサービスが開始されたこと、4,250台の設備情報が登録されていたことを確認しました。

また、実際の設備利用については、各機関が定める条件や制限事項が適用されることを確認しました。

分子科学研究所|全国4,250台の研究設備検索サービス

2.自然科学研究機構 分子科学研究所「研究設備検索ツール」

2026年10月24日確認。

検索対象には、実際には共用されていない設備も含まれることが明記されています。

今回の政策提案では、4,250台を「外部から予約できる設備の数」として扱っていません。

分子科学研究所|研究設備検索ツール

3.文部科学省「先端研究基盤刷新事業(EPOCH)の採択大学の決定について」

2026年7月31日公表。

全国から47件の提案があり、19件を採択したことを確認しました。

全国68大学、51国立高等専門学校を含む180機関以上が参画する計画であること、技術職員やURAを含めたコアファシリティの整備を目指していることを確認しました。

これらは採択・参画の実績や計画であり、参画機関のすべてで外部向け設備利用が開始されたことを示す数字ではありません。

文部科学省|2026年EPOCH採択結果

4.科学技術振興機構「先端研究基盤刷新事業(EPOCH)公募情報」

2026年度公募資料。

当初3年間の支援上限と事業期間について確認しました。

施設整備を伴わない場合の事業費は最大30億円程度、施設整備を伴う場合は事業費最大20億円程度と施設整備費最大20億円程度です。

これらは公募時に示された支援上限であり、各採択機関の実際の交付金額ではありません。

また、2029年度以降の支援については、予算措置や取組状況などを踏まえて判断されます。

科学技術振興機構|EPOCH公募情報

5.Jisc「Equipment Data Service」

2025年にサービスを更新。

英国の大学・研究施設の設備情報を横断的に検索できるサービスについて確認しました。

また、UK Research and Innovationの助成条件として、一定額を超える新規研究設備を全国データベースへ登録する取扱いを確認しました。

登録されていることと、外部から予約できることは区別しています。

Jisc|Equipment Data Service

6.University College London「Research facilities and equipment」

2026年10月24日確認。

1,500件を超える主要な研究設備・施設の検索カタログ、外部研究者や企業による施設利用、利用料金の原価計算、技術職員の費用や設備維持管理費の扱いなどを確認しました。

同大学では、研究設備の費用計算にTRACを用い、研究資金の性質などに応じた料金区分を設けています。

日本と英国の料金や利用実績について、条件をそろえない単純比較はしていません。

UCL|Research facilities and equipment

7.Japan Compass #046「研究者は、研究する時間を取り戻せるか」

2026年9月17日公開。

大学の研究時間、研究費、研究支援人材、共用設備、EPOCH事業を扱った関連号です。

今回の#083は、設備共用の必要性を初出の論点として扱わず、学外利用の条件と実際の利用可能性を検証する続編としました。

Japan Compass #046

8.Japan Compass #071「公費で生まれた研究論文を、誰でも掲載直後に読めるようになるか」

2026年10月12日公開。

研究成果の公開とアクセスについて検証した関連号です。

今回の#083は、研究論文へのアクセスではなく、研究設備を利用して測定・分析を実施するための条件を扱っています。

Japan Compass #071


資料確認上の留意事項

本稿は、2026年10月24日時点で確認できる文部科学省、科学技術振興機構、分子科学研究所、英国の研究設備運営機関などの一次資料に基づいています。

国内の研究設備検索サービスにおける4,250台という数字は、2025年12月31日時点の登録数です。2026年10月現在の登録数ではありません。

また、検索対象には共用されていない設備も含まれるため、登録数を外部利用可能な設備数として扱っていません。

2026年7月のEPOCH採択19件についても、選定結果と実際の運用実績を区別しています。

全国の設備について、外部利用の申請件数、予約成立率、実際の利用人数、利用料金、問い合わせから測定完了までの日数などを統一的に比較できる最新実績は、今回確認した資料では把握できませんでした。

そのため、全国で何台の設備が不足しているか、設備共用によって研究費をいくら削減できるかについて、根拠のない推計は提示していません。

EPOCHや全国的な設備検索サービスは既存の取組です。Japan Compassが独自に創設を提案するものではありません。

今回の独自提案は、既存の設備検索と共用事業を活用し、学外利用の条件を明確にするとともに、問い合わせから実際の測定・分析までの過程を評価することです。


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